まっつん

変態村のまっつんのレビュー・感想・評価

変態村(2004年製作の映画)
3.3
なんとも見事な邦題に惹かれて鑑賞。事前に予測していた通りとても胸糞悪い作品でした。

主人公は売れない歌手の男。彼が老人ホームで慰安コンサートをしている場面から映画はスタートします。彼売れない歌手なんですけども老人ホームではモテモテなんですね。出番が終わって楽屋にいたら入所者の女性がワンチャンしようとしてきたりとか、年増の職員から帰り際に抱きつかれたりとハーレム状態。しかもあろうことか職員の女性からはメッセージ付きのエロ写真を数枚貰ってしまったあげく、そのメッセージは「愛してる」とか書かれている一方で「あなたにはウンザリよ」なんてことも書かれていたりして倒錯気味なわけです。そんな誘惑にも負けずクリスマスコンサートのために南仏に車で向かうんですが、道中、森の中で車が故障。そこで飼い犬を探すどう見てもアレな青年と出会い宿を紹介してもらう....という誰が見たってこの先ロクなことにはならないだろうなと分かる展開。

この宿のおっさんもまぁまぁのキチガイオヤジで最初の方から会話が成り立たない相手だったのですが、中盤以降出て行ってしまった元妻も歌手だったことから主人公を元妻と勘違い。主人公の車を燃やした挙句、車のバッテリーでぶっ叩き、女物のワンピースを着せ髪の毛を刈り上げるわけです。夜になると主人公の横に来てそっと添い寝。明確には描かれていませんが主人公は明らかに親父にヤラれてしまっています。

さらに近隣の村の住民たちも狂っていて、時間つぶしに散歩していた主人公が目にしたのは村の男たち(というかどういうわけかこの村には男しかいないらしい)が家畜相手にパコりまくっているという世にも恐ろしい姿でした。そして宿の親父が村の飲み屋へ散弾銃片手に出向き、「俺の嫁が帰ってきた。お前ら俺の幸せを邪魔するようなことはやめろ。俺の家には近寄るな。」などと余計なことを言ったばかりに偉いことになってしまうと....

最終的には「悪魔のいけにえ」ライクなクリスマスパーティーシーンを経て、村の男たちが宿を襲撃。銃撃戦の末、親父は射殺され主人公は助かったと思ったのも束の間、どういうわけか村の連中も主人公を親父の元妻だと思い込んでいる!女性に飢えた村の住民は主人公を情け容赦なくレイプしてしまうという主人公にとってはあんまりな展開。

そして映画最終盤、ある男が主人公に対する(というか親父の元妻に対する)愛を告白します。序盤から一種「歪な形の愛」を受け続け断り続けてきた主人公はここで遂にその愛を受け入れてしまう....関係ないけどこのシーンは「サイコ」なんかを連想したりして。

本作の原題は「ゴルゴタの丘」。新約聖書においてキリストが十字架に磔にされたとされている場所です。タイトルからも分かる通り実に宗教色の強い映画ですね。本作におけるキリストは明らかに主人公でしょう。彼が受ける受難の物語であり、彼は殉教者として村人たちに救いを与える存在となっていく。クリスマスの季節を舞台にしてるのも意味深長だなと思いました。さらに主人公の名前はマルクなんですがこれはイタリア語圏に多い名前であるマルコをフランス語で対応させたものです。キリスト教的にはマルコという名前は「マルコの福音書」を想起させます。マルコという人物はペテロからイエスの教えを聴いて福音書を書き記しました。彼の福音書にはキリストの受難が描かれており、彼自身非常に人懐っこく好かれる人物であったと言われています。主人公のマルクの名前は彼から取ってきたのかな?と深読みも出来ますね。