うべどうろ

ハタリ!のうべどうろのレビュー・感想・評価

ハタリ!(1962年製作の映画)
3.6
 やっぱりCGが普及したことで、損なわれてしまった映画の強みというか、映像の迫力のようなものがあると確信してしまう。車載カメラで撮られた臨場感溢れるサイの映像は、「野生」という言葉の意味をこの作品に持ち込んでいる。それがあるからこそ、作品のほかの部分にある「緩み」がいかされて、重層的なコメディとして仕上がっているのではなかろうか。
 これをもって、一度ハワード・ホークス映画祭を終わりにするけれど、彼の凄さはジャンルの多様性にあり、それを可能にするものこそ、人物造詣の巧みさではなかろうか。この作品も、ポケッツのコミカルさを筆頭に、どのキャラクターも好きになる愛おしさがあって、長所もあれば短所もあるという、人間の根本がちゃんと守られているのだと思う。
 そしてその人物たちが織りなすテンポの良い会話も素晴らしい。冒頭の「ベッドに彼女がいる」シーンとか、「キスは嫌い?」のシーンとか、キャラクターたちが「わからない」を話すシーンが飛び抜けて面白い。コメディの本質なのかなぁと気づく。チグハグはやっぱり面白い。それをこのテンポでこなす俳優陣も素晴らしい!
 ただ、「カタルシスのなさ」もやっぱりハワード・ホークスで、この作品も二時間半のっぺりした時間が続く。それが惜しい。「教授と美女」くらいの尺ならそれも許せるんだけど、ここまで長いとちょっとなぁという気にならないわけでもないような。
うべどうろ

うべどうろ