ALABAMA

蛇イチゴのALABAMAのネタバレレビュー・内容・結末

蛇イチゴ(2003年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます


西川美和初監督、脚本作品。是枝監督の下で修行、監督デビューを果たしているため、製作にはエンジンフィルム、テレビマンユニオン、プロデューサーに是枝裕和監督が名を連ねている。
明智家のいつもの朝。小学校で教諭をしている長女倫子、認知症を患うおじいちゃんを献身的に看病する母章子、仕事熱心で厳格な父芳郎。一見、どこにでもいそうな一家族であるが、実は噓と虚勢に固められ、形骸化したぬけがら家族である。やがて訪れた祖父の死によって織り成す糸は綻び、崩壊が始まる。父のリストラと多額の借金、母の爆発したストレス、そして勘当されたはずの香典泥棒の兄周治の帰宅。崩壊した明智家に再び幸せを取り戻すために倫子がとった行動は嘘つきの兄に噓をつくこと。幼少期、兄に蛇イチゴがあると山に誘き出され、迷子になってしまった過去から、兄を山へ誘き出し、警察に通報する。翌日、倫子の眼前には真っ赤な蛇イチゴが…。
この最後の書き方では分かりづらいが、それは映画を観て頂ければ分かるので説明は省略。
コミカルで気味の良いテンポとのんびりとした長回し、オフの空間を感じさせるフィックスの多用によって、観ている側はこの映画を豊かな感性で以て味わう事ができる。ただ、構図の問題であるだろうが、この映画のフレーム外の空間の広がりが横にしか感じられない場面が多くあった。それは横の構図の多さと、人物がフレームアウトする場所、フレーム外の音の発生源がフレームの横に広がる空間であることが大きな理由であろう。
虚構が打ち崩された時に起こる崩壊。非常に暗いテーマではあるが、それをいわゆるブラックコメディといった形で見事に映画として溶かし込んでいる。
おもしろいのは、西川美和監督の脚本執筆のスタイル。基本的には本人が観た夢がインスピレーションの元になっている。夢を元に地元広島に帰り、山籠りのような状態で脚本を書く。籠って脚本を書くという事はよくあることだが、その多くを、夢を元に書いているのは珍しい。だいたい筋が崩壊している夢というある種パーソナルな世界を繕い直して出す。これからゆっくり西川美和監督作品を観ていきたいと思う。