★ 無味に近い甘さ、それがヘビイチゴ
何ともイヤな気分になる作品でした。
一見して幸せそうな家庭。しかし、水面下ではボロボロであり、些細なきっかけで崩壊寸前である…そんな姿をシニカルな筆致で描いた物語。見た目はアッサリでも内面はドロドロなのです。
しかも、地に足がついた日常描写は見事な限り。この西川美和監督の“いやらしい”筆致は、師匠である是枝監督譲りなのでしょう。思わず目を逸らしたくなるような映像が心を抉り取っていきます。
ただ、そんな強烈な筆致も。
濃淡がなければ単調になるのは否めず。
胃が痛むような描写を選ぶならば、その必然性も観たかったですね。特に痴呆老人をシニカルに描くのは…ただただ嫌な後味が口に残るだけでした。
また、贅の極みのような配役(なんと佐藤浩市さんが端役…!)も、有機的に活用できたかというと微妙なところ。やはり、役者さんの持ち味をギリギリまで引き出すのは、監督さんの“観察眼”があってこそ。比較するのは失礼だと思いますが「師匠の“技”には届いていない」なんて思ってしまいました。
ただ、宮迫博之さんに限って言えば。
お笑い芸人とは思えない存在感は見事でした。
と言っても、本業を見たことがないので、芸人と役者で違いがあるかどうか…なんて分からないんですけどね。
まあ、そんなわけで。
喩えるならば“問題が提示されないテスト”のような物語。是枝監督成分を求めてしまうと物足りなさを感じますが“山奥で放置された気分”を味わいたい時にはオススメです。
それと不遜にも色々と指摘しましたが、本作が西川美和監督のデビュー作なのですよね。それを考えれば見事な仕上がりであるのは間違いなし。次作以降の筆致を観てみたい…と思いました。
最後に余談として。
つみきみほさんって福山雅治さんに似ていませんか?そう感じるのは自分だけかな…。