菩薩

ヒロシマモナムール/二十四時間の情事の菩薩のレビュー・感想・評価

4.2
恋と戦争は対極にあるのかもしれない。愛を生み新たな命を生む恋と、憎しみを生み多くの命を終わらせる戦争と。だが恋に傷つきもう恋なんてしないなんて言ったところで人はその悲しみを忘れて恋をするものだし、もう2度とこの悲劇を繰り返してはならぬと言いつつ多くの殺戮を重ね人類史は塗り替えられて来た。忘却とは実に都合の良いシステムだ、自らを前に進める為にも、後ろに戻す為にも。ただ忘れるべきもの、忘れても良いものと、そうでないものとははっきりと区分せねばならない。人は自分が見て聞いて体感してしまった悲しみは忘れられぬものだが、そうでないものはいつか忘れ去られてしまう、かもしれない。その先にまた新たな悲劇の起点が打たれぬよう、時には頬を合わせ、視線を絡ませ、その悲しみを受け継ぎ広げていかねばならない。悲しみは繰り返してはならない、その人にはその人の、その街にはその街なりの悲劇が眠っているのだから。
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