Yoko

オープニング・ナイトのYokoのレビュー・感想・評価

オープニング・ナイト(1978年製作の映画)
4.5
名女優”マートル”は新作舞台『二番目の女』の主演を務めることになったが、果たすべき役になじむことが出来ずに苦悩する。
「老い」に対してひそかな怯えを抱える彼女を悩ますのは…。


映画本編についていろいろ感想を書くその前に、うっすらと目元が見えるか見えないかの微妙な濃さのサングラスをかけたジーナ・ローランズのかっこよさたるさ!
もうこのジャケットだけでも十分に認めることが出来る大女優としてのオーラ。
しかし、傍から見ているとクールな人物ほど強い孤独を抱えていることは、彼ら彼女らが上手く覆い隠しているから分からないだけであって、不憫にも思える寂しさはこんな凄い女優にも降りかかっている。

そして、このオーラを纏うクールな姿は、現実のジーナと今作の大女優マートル(ホテルの殺風景な自室の寒々しさにも孤独を感じざるを得ない)が同一化しているかのようで、この現実と虚構の一致は、演じる上での苦悩をピリピリした緊張感とともにリアルに攻めてくる。
『こわれゆく女』でもそうだったが、とにかくカサヴェテス作品は画面に目を釘付けにさせる力がある。
背もたれに身を預けリラックスして観ることなぞほとんど出来なくて、観ているこちら側は自然と真剣なまなざしにならざるを得ない。

展開も面白くて、迫真の長回しでリアルを追求するかと思えば、ふと目がかすんで物が二重に見えたような時の感覚を巻き起こし、ある人物(?)の登場によってこの幻想的感覚が丸々スクリーンに映し出される。
ただ、振り切った彼女の姿はまさに圧巻なのだが、今作の劇中劇のメッセージを理解するのは正直難しい。
ホッとした気持ちが強い反面、これで終わってしまっていいのか?という半信半疑の感情が渦巻く。
おそらくまだまだ私自身、人生の経験が足りてないのかも。

それでも言えることは、曝け出し悩みそれでも燦燦と輝ける彼女がまさしく正真正銘の女優であることを、頭で解釈するのではなく、実感ができることだろう。
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