しゃび

楢山節考のしゃびのレビュー・感想・評価

楢山節考(1958年製作の映画)
4.0
【走る映画、歩く映画】

多くの映画は「移動」なくしては語れない。

歩くのか、走るのか、車を使うのか。
どのようなスピードで歩くのか。
どのようなスピードで走るのか。

移動は物語を進めるだけでなく、
映画のテンポや感情、キャラクターの性質を語る大事な要素だ。

例えば『その男凶暴につき』で、
その男が凶暴である所以は歩行にある。


この映画の演劇感たっぷりの一本道は、
「移動」を際立たせる。

ラストの歩行からの疾走は、ずっと抱え続けてきた葛藤の発露だ。

『日本の悲劇』における列車への突撃も、衝撃的だったけど、この映画の疾走も胸を打つものがあった。

その全てを嘲笑うかのように走り抜ける、一本の列車。「ぼくらのもやもやなんて所詮ちっぽけなものなんだけどね」と言われているように感じた。
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