【走る映画、歩く映画】
多くの映画は「移動」なくしては語れない。
歩くのか、走るのか、車を使うのか。
どのようなスピードで歩くのか。
どのようなスピードで走るのか。
移動は物語を進めるだけでなく、
映画のテンポや感情、キャラクターの性質を語る大事な要素だ。
例えば『その男凶暴につき』で、
その男が凶暴である所以は歩行にある。
この映画の演劇感たっぷりの一本道は、
「移動」を際立たせる。
ラストの歩行からの疾走は、ずっと抱え続けてきた葛藤の発露だ。
『日本の悲劇』における列車への突撃も、衝撃的だったけど、この映画の疾走も胸を打つものがあった。
その全てを嘲笑うかのように走り抜ける、一本の列車。「ぼくらのもやもやなんて所詮ちっぽけなものなんだけどね」と言われているように感じた。