ヒロシー

楢山節考のヒロシーのレビュー・感想・評価

楢山節考(1958年製作の映画)
5.0
映画全編を通して伝わる気迫に圧倒され、震えながら観ていた。姥捨を歴史的事実として忠実に描くというよりも民間伝承として残っているものと位置付け、そのために一つの架空のムラ社会を全てセットで作り上げるというのがまず凄い。美術の力の入りようは狂気のレベルで、それを引きのカメラで登場人物の寂しい佇まいと共に撮るので、画面から伝わる寂寥感は本当に震えるほど恐ろしい。振落しやライトの使い方、そして和楽器が鳴り続ける歌舞伎的演出も奇妙ながら映画的なものにきちんと収まっており、姥捨の流れの説明をも演出に落とし込む徹底ぶり。そして言うまでもなく田中絹代の鬼気迫る演技。日本社会の黒い部分を今でも批評し続ける傑作中の傑作。職人監督の木下惠介、きっと本作だけは好き放題できたんじゃないでしょうか。
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