氷雨水葵

ショコラの氷雨水葵のレビュー・感想・評価

ショコラ(2000年製作の映画)
4.3
2023年23本目

Happy Valentine's Day!

◆あらすじ
北風とともに、フランスの小さな村にやってきた母ヴィアンヌ(ジュリエット・ビノシュ)と娘アヌーク。

敬虔で厳格、どこか閉鎖的なこの村で、ヴィアンヌはチョコレート店を開く。

ヴィアンヌは、チョコの持つ不思議で魅惑的な美味しさで、村人の眠っていた情熱を呼び覚ます―――。

◆感想
今日はリア充を燃やしても良い日・・・いえ、バレンタインデーなのでぴったりの映画を鑑賞。タイトルは聞いたことあったのですが、実は初鑑賞。

お菓子ではなくいわゆる’’ショコラ’’が食べたくなりますね!ヴィアンヌが作るチョコがとにかく美味しそう。種類がたくさんあって、見た目もオシャレで、クリスマスでもないのにホットチョコレートが飲みたくなったりして。チョコ店を舞台に描かれる人間ドラマがまた面白い。全編恋愛物じゃないところも良い。チョコの甘さと恋愛の胸焼け必至の甘さのダブルパンチで来たらどうしようかと思いましたが、ジョニー・デップとのいい感じシーンは1割もない。
まぁ内容が、閉鎖的な村の因習がチョコをきっかけに変化する、という人間の本質に迫るテーマ性なので恋愛要素は不要だと思いますが。

にしても、ヴィアンヌが魅惑的で美しい。チョコが美味しそうなのもそうですが、彼女が秘める、どこかミステリアスな雰囲気が客を店に誘うのかな。イヤらしい意味ではなく、北風と共にやってきた母娘に興味津々みたいな感じ。当のヴィアンヌは、宗教や因習にとらわれない、いわゆる’’自由’’な思想の持ち主で、それに加え強さも持っている。しかも、客が抱える悩みや葛藤みたいなのを見抜く力も持っていて、ぴったりのチョコを処方してくれるときた。チョコ一粒、チョコレートケーキ1切でも人は幸せになる、ヴィアンヌは人間の本質を見抜く力の持ち主なのかも。ジュリエット・ビノシュの演技素晴らしい。そして、毎日変わる衣装も可愛い!チョコっぽい色味のときもあれば、暖色系の服を着ているシーンもあり、とにかくコロコロ変わるので、ぜひ見てほしいです。

とにかく、村人たちが石頭すぎてイライラ・・・とくにDV夫や村長ね。結局は世間体(といっても村内のみだけど)ばかり考えてる。しかも、改心してもしきれず、妻に逆切れする始末。ブチ切れたいのはこっちだっつーの!!花束渡して妻が戻ってくると思ってんのか!!村長にしても、奥さんが旅行から帰ってこないのは浮気してるからだ、と村人全員に言いたいわ。なにが結婚の誓いだよ!それを言ってる、あなたが神に見放されてますけど!?
と、まぁ村人や村自体にいろいろ言いたいことはありますが、そこも含めて見どころではあります。

ちょい役(?)ジョニデに、ピチピチ服じゃない大人なキャリー=アン・モスを見れるもの良い。「海賊」や「チョコ」といったワードが飛び出すと「お!」となります。パイレーツもチャリチョコも数年後なのに。
そしてやはり、こういう作品で存在感・演技力を見せてくれるのは、アルマンドを演じたジュディ・デンチ。アクション映画もそうだけど、こういうヒューマンドラマで良い位置にいるのが素晴らしい。チョコ店でホットチョコレートを飲んだり、ケーキを食べたり、ヴィアンヌや滅多に会えない孫と仲を深める過程を見ていると、ほっこりします。

北風とともにやってきた母娘、いわゆる流れ者だけど、ラストに待っているのは古い慣習に囚われないことを選んだヴィアンヌと村の姿。陰鬱な村が解放されるのと同時に、風の旅人である必要はないという、ヴィアンヌの心にも変化が。深いテーマ性を持つ今作は、チョコの甘さを感じつつも、人間の本質を見れるハートフルな作品です。

ジュリエット・ビノシュが醸し出す魅惑的な雰囲気と、甘くほろ苦くもあるチョコの世界に浸ってみてはいかがでしょうか?
氷雨水葵

氷雨水葵