サマセット7

レイダース/失われたアーク《聖櫃》のサマセット7のレビュー・感想・評価

3.9
監督は「ジョーズ」「E.T.」のスティーブン・スピルバーグ。
主演は「スターウォーズ」シリーズや「ブレードランナー」のハリソン・フォード。
製作総指揮は「スターウォーズ」シリーズのジョージ・ルーカス。

1936年。
考古学者インディアナ・ジョーンズ(ハリソン)は、罠が満載された危険な遺跡に挑み、宝物を掘り出す日々。
そんな彼にアメリカ政府より依頼が。
ナチスが狙う秘宝「聖櫃」を、ナチスより先に見つけ出し、回収して欲しいというのだ。
ジョーンズは発掘の鍵となるメダルを持つ、かつての恋人マリオンと接触を図るが、ナチスもまたメダルを狙っていた…。

ジョーズ、未知との遭遇で大成功を収めたスピルバーグが、スターウォーズで成功したジョージ・ルーカスの原案をもとに監督を務めた作品。
非常に高く評価されており、アドベンチャー映画の金字塔とされている。
オールタイムベストランキング常連。
アカデミー賞5部門受賞。
世界中で大ヒットを記録し、シリーズ化された。

スピルバーグ、ルーカスをはじめ、原案にフィリップ・カウフマン(ライトスタッフ)、脚本にローレンス・カスダン(スターウォーズシリーズ)、音楽をジョン・ウィリアムズ(ジョーズ、ジュラシックパークなど多数)といった、錚々たる面々が結集している。

元は007シリーズのようなアクションを撮りたいというスピルバーグの要望に、ルーカスが原案を示した、という経緯でプロジェクトが始まった。
ルーカスの構想は、数分に一度クライマックスがあり、連なるように見せ場が続く活劇、というもの。
まさしく今作は、アクションや見せ場が途切れることなく続く点に特色がある。

密林から始まるオープニングからの遺跡探索劇は象徴的。
次から次に危機が訪れ、息つく間もない。
裏切り!
矢の罠!
落とし穴!
そして、転がる大岩!!!
この調子で繰り出される見せ場の連打は、ラストまで続く。

今作の見どころの一つは、エキゾチックな異国情緒にある。
ペルー、ネパール、そしてカイロ。
次々と舞台は移り変わり、トラベル・ムービーの趣きもある。
それぞれ特徴ある異国の風景は、まるで異世界の如しだ。
遺跡探索が始まるとさらにその傾向は高まる。
蜘蛛や毒蛇といったゾッとする生物が多数登場することも、異世界感を高めている。
なお、無数の蛇は本物を使用しており、血清を用意して撮影したとか。

インディ・ジョーンズの人を食ったキャラクターをはじめ、今作の登場人物はどれもユーモアを湛えており、物語をコミカルに彩っている。
カイロで曲刀を振り回す男に対する、インディの一撃などは最たるもの。
ヒロインのウワバミっぷりや、協力者の能天気なノリ、猿、敵役のゲシュタポの笑い声など、細部に印象に残る楽しい描写が多い。

若きハリソン・フォードは、ジャンプ、縄の伝い降り、格闘、銃撃、ムチ使いと縦横無尽の活躍。
白眉は、終盤のトラックでの追跡劇であろう。
疾走するトラックの上下左右を空間的に活用してみせる、高度なカーアクションが見られる。

今作の創作上のテーマは、クライマックスの連打!!になろうか。
各キャラクターの配置や設定、ストーリー、マクガフィン、舞台などなど、今作の全ては、このテーマに奉仕するために存在していると言ってよかろう。
81年には斬新だったであろうこの手法は、その後膨大なフォロワーに参照された結果、今ではありふれたものとなっている。
とはいえ、やはり面白いものは面白い。

最終盤の展開に鑑みれば、「己の分を弁えろ」という、人間の傲慢への警鐘がテーマとも言えるかも知れない。

難しいことを抜きにして、ノンストップで楽しめるアドベンチャー映画の名作。
今作の人気を受けてシリーズ化されており、スピルバーグが3作以上のシリーズの監督を務める稀有なシリーズとなっている。
シリーズを順に観ていくこととしたい。