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赤い影のSSDDのレビュー・感想・評価

赤い影(1973年製作の映画)
3.8
■概要
とある昼下がりに幼い兄弟達は外で遊んでいた。夫婦は家で仕事をしているが、夫がこぼした水がスライドに溢れ、教会の中にいる赤いフードの人物の写真部分が赤く染まり上がったことで嫌な予感をし、外に飛び出す。兄が叫んでいるのを見つけ池に飛び込むが、真っ赤なレインコートを着た妹は溺死していた…。それから時は経てヴェニスでの仕事をしていると不気味な人々、赤い影がちらつきはじめる…。

■感想(ネタバレなし)
フォロワーのこぅ閣下からの推薦。ヒッチコック作品の原作者の短編である"今は見てはいけない"を映像化したものだそう。

少し冗長的で長いとは感じるものの、水の都と謳われる美しい街が、どこか澱んだ水の底にいるような薄暗い暗部だけを切り取った世界観に、赤が異様に映える。
そこかしこに何かが潜んでいそうな気配をさせるのはやはり暗闇への恐怖からか。

謎の死体や、ちらつく影、怪しげな盲目の姉妹など不安になる要素を点在させながらピアノの旋律が切なく不安定になる音色が素晴らしい。

どのような終わり方か読めない展開に痺れました。











■感想(ネタバレあり)
・怪しげな霊感を持つ盲目の妹と姉の姉妹
霊感を持つ妹に赤いレインコートを着た娘を二人のそばに感じると言われた妻が精神的に安定したり、夫は霊感があると言われたりと不可思議なことを口にする上に行くところ行くところで目にする怪しい存在。
近くで連続殺人が起きて死体を見たりとまるで関与をちらつかせることで不安を煽るのは素晴らしい手法。
ただし、やたら霊感発動時にやかましいのが嫌だし、側から聞いたら何観てんだと思われるほど喘ぐのが嫌悪感がある。

・未来の幻視
妻が飛行機に乗りイングランドに行ったはずが、姉妹とボートに乗っているのを目にした夫の時点で喪服に見えたので何か幻視したとは思っていたが、自分の葬式を観ていたという結末にはしてやられた。

・赤い影
姉妹達に言われた赤い少女が見えるというのが暗示になり、赤い影を追うようになってしまうのが悲しい。
実際には娘は警告したくて現れたのだとして、逆効果になってしまったのだから。
最後には小人の醜い赤いコートの女に殺されてしまう夫がなんとも不憫。

・赤い幻視
冒頭のスライドに写っていたのは殺人鬼だったのだとすると、娘の死を予兆した夫だったが実際には虫の知らせは娘の死と、自分の死を同時に予兆していたのかもしれない。
もし予言や幻視があるとしても確かに時系列だって理解できるように啓示してくれるとは限らない。

姉妹が言ったように特殊な才能が呪いと化すというのは、断片的な情報で突き動かされてしまうことの危うさを指していたのかもしれない。

・総評
冗長的ではあるものの、悪い人間はただ殺人鬼一人で悪い方向に悪い方向に全てが転がってしまった物悲しい話でした。
なかなか独創的な世界観も秀逸な作品でした。
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