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赤い影のMOCOのレビュー・感想・評価

赤い影(1973年製作の映画)
3.5
「もう悲しまなくていいわ。大丈夫よ、女の子を見たわ。
『幸せだから心配しないで』と、あなたとご主人のあいだに座ってた。
 女の子は楽しく笑ってた。
 いつも一緒だから大丈夫よ。あの子は幸せなの、ピカピカのレインコートを着ていた・・・」

 イギリスに住むジョン(ドナルド・サザーランド)と妻ローラ(ジュリー・クリスティ)は、雨上がりのある日曜日の午後、屋外で遊ばせていた娘クリスティン(シャロン・ウィリアムズ)を池で溺れさせ死亡させてしまいます。不思議なことにジョンは娘が溺れる瞬間を霊感で感じとり誰に教えられることなく池に向かっていました・・・。
 
 数ヶ月後、ジョンは立ち直ることができない妻ローラを連れ、教会修復の仕事でイタリアのベニスを訪れます。待ち合わせのレストランで二人は年老いた姉妹にめぐり合います。
 姉はウェンディ(クレリア・マタニア)盲目の妹はヘザー(ヒラリー・メイソン)、ローラはトイレで霊感を持つヘザーに「もう悲しまなくていいわ・・・」と言われます。
 姉妹と再会したローラは、ヘザーから「ベニスを去らなければ、ジョンの身に危険が降りかかる」とクリスティンが言っていると教えられます。
 その夜、息子の寄宿舎から電話が入りローラはジョンを残し一人イギリスに帰っていきます。
 次の日教会の高所のステンドグラスを修理していたジョンは突然ゴンドラのロープが切れ宙吊りになり恐怖を感じ、姉妹の言葉を信じて街を出ることにします。ところが利用した水上バスとすれ違う水上タクシーに乗るローラとウェンディ、ヘザーを見てしまうのです。ローラは街にいないはずなのです。
 ジョンは水上バスを降り3人を探すのですが、姉妹はホテルを引き払っていて、ジョンは姉妹をベニスを騒がせている連続殺人事件の犯人と疑いローラを心配して警察に届けます。
 やがて寄宿舎を訪ねたローラに連絡がつき、ジョンは事情徴収を受けていた姉妹に謝罪をした帰り道で赤いコートの女の子を見かけ追いかけはじめるのです・・・

 ベニスを離れてという言葉に隠されたものは・・・
 ジョンが水上ですれ違った3人は幻覚だったのか・・・
 たびたび現れる赤いレインコートの女の子は・・・

 製作国のイギリスでは非常に人気が高くミステリー映画の名作といわれています。私も傑作と思います。
 赤いコート・ガラス・水の映像を随所に巧みに使ったこの映画は、終始謎めいた画像や表情が折り込まれやや難解に進んで行くのですが、ジョンの霊感が最後に効いてきます。
 水上ですれ違ったローラが着ていたのは・・・。

 原題は「Don't Look Now」ダフニ・デュ・モーリエの短編「いまは見てはだめ」の映画化、夫婦がレストランで老姉妹を初めて見た時のセリフです。日常的に良くある会話で「今見たらだめよ、あなたの後ろのテーブルの二人がね・・・」という感覚。
 
 冒頭オンタリオ湖の話をするローラに「見た目と違うね」と答えるジョン。そう見た目とは違うのです、何事も・・・
 
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