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赤い影のArxのレビュー・感想・評価

赤い影(1973年製作の映画)
3.8
ホラー映画だという前触れで見ると余り怖くは無かったが、ある意味それは20台後半の自分が何をリアリティを持って怖いと思うかを反映しているのかもしれない。かなり大人の映画だと感じた。身内の喪失と男女の隔絶がテーマだから。

冒頭、主人公の娘が溺死してしまう。中年夫婦はその傷が癒えないままヴェネチアへ仕事に向かう。そこからある事をきっかけに夫婦の愛が再生し、前半の有名なセックスシーンに突入する。ここまでならハッピーなのだが、この後から男女の感性のズレがどんどん深刻になっていく。

最後、夫が殺されて葬式に出た妻は笑みを浮かべていたが、「ミッドサマー」で最後に主人公が見せた笑みを思い出した。

何度も繰り返される赤いコートを着た娘が死ぬシーンのフラッシュバック(ヴェネチアのシーンでも要所で赤が出てくる度にドキリとする)、斬新な場面転換、迷宮のように見えるヴェネチアの撮り方など印象的な映像表現は多い。
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