atsuki

ブルジョワジーの秘かな愉しみのatsukiのレビュー・感想・評価

4.7
食欲も性欲も、あらゆる欲を求めようものならば徹底的に邪魔をする。決してブルジョワ達に欲望を満たさせない。ブニュエルの『皆殺しの天使』をブニュエル自身がある種のセルフリメイクを行なっているという曰く付きのブラックコメディ。

そもそもブニュエルは晩餐をブルジョワの究極的な欲望としている。『皆殺しの天使』はその晩餐へ永遠と閉じ込める事でブルジョワ達を殺した。いわゆる皮肉な訳ですよね。「お前らが欲する晩餐が永遠に出来れば嬉しいだろ?」という話。結果として隠れていた本性が露呈するし、人間的に退化して行く。

今作はブルジョワを違った形で殺す。

つまりは晩餐を永遠に開かせないのだ。満たしたい欲望を満たせない飼い殺しのブルジョワ達は秘かに欲望を満たすべく、妄想に走る。そんなシュールレアリズムの世界は意識的ではなく、無意識的に起こってしまうものなのがまた皮肉的である。そこに政治的な映画として顔を覗かせ、批判し、対抗し、笑いに変える事でシニカルなユーモアに包まれるのだ。