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座頭市血笑旅のodyssのレビュー・感想・評価

座頭市血笑旅(1964年製作の映画)
3.0
【赤ん坊を抱えた座頭市】

座頭市シリーズの第8作。

今回は、安くしておくからと強引に籠に乗せられた座頭市。途中赤ん坊を抱えて苦しんでいる旅路の女を見つけて代わりに籠に乗せたはいいけれど、座頭市を付け狙う殺し屋たちが勘違いして籠の中身も確かめずに剣を突き刺したために女はあの世へ。残された赤ん坊を父親のところに届けようと、座頭市は子連れの旅をするはめに。

赤ん坊を抱えての苦労と、刺客たちとの殺陣と、さらには途中で女スリ(高千穂ひづる)と知り合いになり、一緒に旅をすることになるなど、単調さに陥らないための工夫がこらされた脚本です。そして長旅の末に座頭市はようやく父親のところを訪れるのですが・・・・

高千穂ひづるはお姫様女優とされていますが、この映画に出た頃はすでに三十代。そのせいかどうか知りませんが、さほど魅力的には見えない。また座頭市と対等に渡り合う悪役が出てこないのも少し淋しい気がします。

ちょっと面白いのは、「めくらでございます」を繰り返しながら練り歩く盲人たちが、冒頭、中途、最後と三回登場すること。特に最初では刺客に付け狙われる座頭市を助ける役割を果たします。と同時にこの集団は、座頭市がヒーローとして描かれる映画にあって、その存在が特別なものではなく多数の中のひとりに過ぎないのだという暗示になっているのかも知れません。この映画でもっとも優れた演出だと思われたのは、この座頭集団でした。
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