垂直落下式サミング

座頭市血笑旅の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

座頭市血笑旅(1964年製作の映画)
4.0
街道に転がる牛糞を避ける座頭市の歩みのアップでスタートするが、今回座頭市は人様の子供のおしめを替えなければならなくなる。
自分の身代わりになって殺された女が胸に抱きかかえていた赤ん坊。責任を感じた市は、その子を父親の元へ送り届けることにするというストーリーだ。
シリーズ第8作目にして座頭市があまりにも強いことに困った作り手は、彼に赤ん坊を守りながら戦わなければならないという物語上のハンディを与えることで、アクションの切迫感を維持することにしたようだ。実は『子連れ狼』の原作より5年以上も前の映画である。
道中一緒になる女スリとともに赤ん坊を父親に届けようとするのだが、泣かれるのが嫌だから義務的にあやす男と、面倒をみるうちに母性に目覚めていく女といった具合に、男女で子供への情の持ち方が違うことがよく描けていたと思う。どちらもずっと赤ん坊の面倒をみていて気が寄らないわけはなく、市と女との疑似夫婦的なやり取りがどんどん情緒的になっていくが、勝新の居合いをみせるアクションは一級品。セットをフルに活用したワンカット長回しの殺陣など激しい暴力に満ちた挑戦的な一作となっていた。
ラストでは弱点の松明で追い詰められるが、めくらを補ってあまりあるほどにフィジカルが強いのでなんとかなる。