イチロヲ

砂丘のイチロヲのレビュー・感想・評価

砂丘(1970年製作の映画)
4.5
警官殺しの容疑を掛けられた学生運動家の青年が、セスナ機で砂漠地帯を逃避するうちに、自分探しの旅を続けている女性と知り合う。60年代アメリカのヒッピー・ムーブメントをイタリア人監督の感性で描いている、ヒューマン・ドラマ。

本作の主人公は、暴力の連鎖に嫌気がさしている非暴力主義者であり、ニヒルな態度で体制側を煙に巻いていく。生粋の問題児ではあるが、他人に危害を加えるチンピラとは異なる。そんな彼が大企業の秘書をしている娘と出会い、次第に同調していく。

砂丘でのイチャイチャ劇が長尺で収められているが、これは砂丘の虚無感を自分自身の存在意義と重ね合わせていると捉えるのが妥当。安保闘争直後のシラケを題材にした日本映画との類似点が多く、(根拠はないが)神代辰巳への影響力が見受けられる。

本作はピンク・フロイドの起用で有名だが、実際は3曲程度しか使われていない。「盗んだセスナをヒッピー調に塗り替えてから返す」という、支配からの卒業。ラストには、驚愕の爆破シーンが待っている。
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