ymd

ドーン・オブ・ザ・デッドのymdのレビュー・感想・評価

ドーン・オブ・ザ・デッド(2004年製作の映画)
4.3
リメイク元のジョージ・ロメロ版はまだ未見なのだけど、本作はロメロ版を知らなくても充分に楽しめる最高のゾンビ映画だ。

そりゃパイオニア的な『ドーン・オブ・ザ・デッド』のリメイク作なので当然なのだけど、本作にはジャンル映画の様式美で完成されており、後発のゾンビモノに多大な影響を与えているのは間違いない。

今でこそ一つの型として成立している“走るゾンビ”を確立した記念碑的作品でもあり、ロメロ版の単なる焼き直しにはならないオリジナリティを有しているのも素晴らしい。

シンプルで明快な脚本と、個性的で分かりやすいキャラクター造形によって映画全体が交通整理されているのもパニックムービーとしての機能性を高めているのもポイントだ。
畢竟、この手の映画に難解なテーマや表現は不要なのかもしれないと思わされるほどストレートな推進力に唸る。

監督がザック・スナイダー、脚本がジェームズ・ガンという現代トップランカーが若かりし頃に作り上げた本作は、両者のサブカル・ジャンル映画に対する偏愛的な嗜好が存分に溢れている。
今やアメコミ映画界において最も注目を浴びるキーパーソンとなった2人にとってゾンビという魅惑的な素材は相当の掘り甲斐があったのだろう。

悍ましいゴア描写が満載のプロットの数々にはジェームズ・ガンらしい露悪趣味が全開で、特にある出産シーンの凄惨さには打ち震える。
死の象徴ともいえるゾンビの誕生を通して生の意義を俯瞰するという形而上的な表現の巧妙さ(そしてグロテスクさ)には膝から崩れ落ちそうになってしまった。

容赦の無い苛烈な幕切れも完璧。
ゾンビモノにはオチをどうつけるかという命題が常に横たわっているが、本作は数々の丁寧な下処理を施したストーリーテリングによって非の打ち所がないクライマックスを用意することに成功しているのである。
そして観衆はその絶望的な景色を傍観しながらも当然の帰結として納得感を胸に抱くのだ。

定期的に傑作と呼べる作品が世界各地で生まれているゾンビモノだけど、本作は偉大なるジャンルの父であるロメロ版に対する明確なリスペクトを打ち出しつつも、“ならではの”魅力を有する本作もまた金字塔として歴史に残るべき逸品だ。
ymd

ymd