カツマ

ドーン・オブ・ザ・デッドのカツマのレビュー・感想・評価

ドーン・オブ・ザ・デッド(2004年製作の映画)
3.8
かつてはカルトホラーの1ジャンルにしか過ぎなかったゾンビ映画を、メジャー級のブランドへと脱皮させた21世紀ゾンビ映画の圧倒的金字塔!ジョージ・A・ロメロのカルト映画『ゾンビ』のリメイクなのだが、そこにグランドホテル形式(限られた空間での劇画的なドラマ)を融合させることで全く新しいゾンビ映画へと昇華させた、ある意味で革命的な作品だった。(ということに2度目の鑑賞で気付いた笑)

そう、あの有名監督もかつてはゾンビ映画を撮っていた。いまやDCお抱え監督と化しているザック・スナイダーの初長編作品にして、脚本を担当しているのはGoGシリーズでお馴染みジェームズ・ガン!すでに大作映えするザックのカメラワークと、グランドホテル形式に不可欠なジェームズの脚本力が見事に融合し、ゾンビ映画が内包しているB級感を一気に刷新。大衆に愛されるべくカルトを越えていくほどの強靭なパワーを発散し、新たなるゾンビ時代の到来を告げてみせた。

〜あらすじ〜

穏やかなはずの一日だった。看護師のアナは夫のルイスと仲睦まじい夜を過ごし、運命の日の朝を迎える。
気付けば寝室のドアが開け放たれ、そこには近所に住む少女が立っていた。ルイスが彼女に声をかけると、突然少女は凄まじい形相で牙を剥き彼に噛み付いたのだ!アナは何とか逃げ延びるも、今度は噛み付かれたルイスが少女と同じく目をギラつかせて襲いかかってくる!
命からがら家を脱出したアナは車で住宅の間を抜けていくも、街は狂気にかられた人々の暴動により大混乱に陥っていた。アナは逃亡の途中で何人かの生存者と出会い、彼らと共に巨大なショッピングモールに隠れることにするのだが・・。

〜見どころと感想〜

いきなり開始5分からゾンビワールドに叩き込まれるフルスロットルのテンションと恐怖!冒頭からキューブリックの『シャイニング』オマージュが炸裂したりと、ホラー映画への愛をゾンビ映画というミキサーにかけて見事にシャッフルしてみせている。オリジナルの『ゾンビ』に出演した面々もテレビ画面の中にカメオ出演していたりと、細かい小ネタまでマニア心をくすぐる痒いところに手が届いている作品でもあった。

キャストもゾンビ映画という枠を逸脱した豪華な布陣で固められていて、いまや映画監督としても活躍するサラ・ポーリーは当時は『死ぬまでにしたい10のこと』で大きな注目を浴びたばかりのタイミングでの出演だ。
思えばダニー・ボイルが『28日後』で新世紀ゾンビトリロジーの先陣を切り、エドガー・ライトが『ショーン・オブ・ザ・デッド』でゾンビ映画にユーモアを持ち込み、そして本作がゾンビ映画の王道として新たな先鞭を付けてみせた。そして2010年代の『ウォーキング・デッド』のブレイク、『新感染 ファイナルエクスプレス』へと、ゾンビ史は着々とクオリティを増し、受け継がれていくのであった。

〜あとがき〜

この映画でゾンビはついに走るようになります。いまやゾンビはユラユラと歩く死人というイメージは薄く、この作品のゾンビこそがゾンビ・スタンダードとなっているような気がします。

個々のエピソードを詰め込んでおきながらも整合性に欠けずにテンポよく進んでいくのはジェームズ・ガンの脚本パワーの見せどころ。この作品以降もまたゾンビ映画は数多く作られますが、ゾンビの生みの親ロメロが太鼓判を押したというこの作品こそが、21世紀ゾンビ映画の指標と呼べるのでは、と思いました。
カツマ

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