真田ピロシキ

ドーン・オブ・ザ・デッドの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

ドーン・オブ・ザ・デッド(2004年製作の映画)
4.0
冒頭15分が至高。不穏な兆候を捉えた病院から始まり、予告編で度肝を抜いたゾンビ化した女の子の襲撃。外に出たらまさしく地獄絵図が俯瞰で映し出される。クドクドと語るまでもなく、世界はとっくに終わってしまったことを各ショットが伝えてくる圧倒的説得力。このスピード感の麻薬的な刺激。ゾンビ神のロメロ監督には「走ったら腐った足が千切れる」みたいな苦言を呈されたそうだが、そんなことを言われても「死者が生者を食べたりしないでしょ」とつまらない答えを返したくなってくる。本作と『28日後…』が確かにジャンルの幅を広げたと思いますね。

残念ながらリメイクであるためにオリジナルを無視する訳にはいかず、モールに着いてからはトーンダウン。つまらなくはないがロメロゾンビのような退廃的な情緒には乏しくお約束でやってるような消費社会風刺には特に何も感じ得ない。キャラクターも死のうが生きようが印象には残りづらい。面白みを覚えるのはボードで会話する向かいの銃器店主人アンディと父親を失い精神的に不安定な娘くらい。チンピラCJさんも一度主導権を奪われてからは妙に物分かりの良い兄貴になってつまらない。最低男の方が面白い奴だぞ。お前らの人間ドラマには興味ない。ゾンビを出せ。

イカしたお手製装甲車で脱出する頃からやっと念願のゾンビ増し増しターイム。ライトアップされた車に群がるゾンビ様御集団は野外ライブの観客の如し。サマーソニックゾンビフェスティバルの始まりだ。ハートも体も燃えているぜ。自殺兵器チェーンソーは笑わせようとしているのか判断に迷うw MV畑出身のザック・スナイダー監督初の劇場用映画としては正しく個性と精彩のある一作。ザック監督大好きなスロー演出はまだほとんどない。ポールWSアンダーソン監督ほどではないが、この人も使えるお金が増えるほどロマンが感じられなくなった。ロメロ原理主義者に噛みついていたような初心に帰って欲しく思うも、もうザック監督自体が偉くなりすぎてるので叶わぬ望みだろうな。