あいの

秋のソナタのあいののレビュー・感想・評価

秋のソナタ(1978年製作の映画)
3.7
恨み憎しみの言葉を吐きまくる母と娘!差し挟まれるピアノの調べに思わずほっとするほど。お互い全然歩み寄れない悲惨さで、自分の親の関係と重ね合わせてもあまり思い当たる感情ではなかったので正直どういうふうに解釈したらよいかわからなかったけど、去年の「ベルイマン生誕100年映画祭」パンフレットの「秋のソナタ」の評論?(赤坂真理さん)を読んだらすごくすっきりした。子の愛し方がわからない母と、愛が何より欲しかったのに与えられず、自分が見出した愛まで母親に摘み取られてしまったと嘆く娘。病を抱えた妹。4歳で死んだ息子。苦しみの根はあまりにも深く生の空白は心を蝕んでいくけど、安易な救済が与えられないことこそがこの作品のやさしさだと思う。妻を陰からそっと見守り続ける夫。息子は今も生きていると感じる妻。弱々しく無力とも思えるような優しさがこの世界に確かにあって、それこそが愛なのではないかと思わせる。「赦し」という言葉が印象的に出てきたけど、それもそんなに尊大なものではないんじゃないか。人が苦しみながらもこわごわと他者に与える感情を、ベルイマンは信頼してるのではないか。愛の不在を嘆く彼女に「あなたは愛されていますよ」と言ってあげたい。リヴ・ウルマン美しかった。
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