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ヴォイツェックのKKMXのレビュー・感想・評価

ヴォイツェック(1979年製作の映画)
3.5
 有名な戯曲の映画化で、映画自体も舞台っぽい造りでした。固定カメラでやや長回しとか、演劇っぽい雰囲気でした。セリフ回しももろに昔の戯曲って感じで、正直微細な内容を把握することはできませんでした。そのため、内容は1ミリも面白くなかったのですが、キンスキーの顔芸は絶好調で、それだけでも観る価値はあると思います。


 とにかく、オープニングからキンスキーの顔が爆発してます!動きもコント感強く、とにかく非常にマヌケなイキフンが漂います。しかし、この数十秒で主人公ヴォイツェックが抑圧され自尊心を傷つけられ、周囲からバカにされる存在であることが伝わります。
 賢く無さそうな兵士ヴォイツェックは、上司からも軽んじられて、軍医からは実験台にされています。何故かずっと豆しか食べさせてもらえないヴォイツェック。しかし、この軍医は素の言動から察するにクレイジードクターすぎる!こいつキンスキーよりイカれてるかもしれない。呪われたドクターからすぐに逃げ出せ!
 そんなヴォイツェックにはセクシーな妻がおりますが、ヴォイツェックでは満足できないらしく、楽団の男と浮気しています。

 ヴォイツェックの人生踏んだり蹴ったり。しかも毒電波をキャッチしてヤバいうわ言をのたまうようになる始末。病院行けよ…と言いたいが、すでに劇中で同僚から「病院行け」と言われてました!ただ、行ったところでクレイジードクターの毒牙にかかるのがオチなんですがね…悲惨!


 このように現代から見ると確実に妄想性の障害に罹患しているヴォイツェックでしたが、キンスキーが演じると異様なリアリズムを持って迫ってきます。細かい動きで「彼はご病気なんだな…」とちゃんと伝わるんですよね。やたらと性急な動きとか、突如恐怖に陥る表情とか。オープニングの演技において、逃げられない抑圧により自尊心が破壊され強いストレスに晒されていることもわかりますし。さすが狂気の演技において右に出るものがいないキンスキーだな、と思いきや…『キンスキー我が最愛の敵』を観た限り、単なる地なのかもしれないっすね。

 割と悲劇的な話ですが、終わり方の切れ味も良く、感傷っぽさゼロでさすがヘルツォークって感じでした。しかし、セリフの意味をほとんど読み取れなかったので、現代でも通じる言い回しにしてほしかった。別に舞台じゃないですからね。
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