【過去鑑賞作品 24】
“I always wanted to be a gangster”
暗黒街で育ち、マフィアへの憧れを抱くようになったヘンリー・ヒル。彼はマフィアのもとで働きながら、トミーやジミーといった“goodfellas”と出会っていく。
しかし、時限爆弾のごときキレっぷりを見せるトミーや16歳で殺しを請け負ったというジミーに比べ、ヘンリーは根っからの悪人には見えない。トミーとジミーの行動に対して動揺した表情が窺えるし、殺人や暴力も自分からは行わない。「国家に忠誠を誓うのなんてまっぴらだ。マフィアなら何でもできる」と憧憬を抱いたものの、“血筋”以前に裏稼業に徹するほどの“気概”が彼には備わっていなかったように思える。
だから最後、ヘンリーは自分の命を守るために足を洗い、仲間を売る。ここで「とはいえ法のなかで生きるのもつまらないよね」という『カジノ』や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』に共通の視点も設けられてはいる。
しかし、『カジノ』のエースや『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のジョーダン・ベルフォートは悪事がバレて仕方なく足を洗ったのに対し、ヘンリーは(裁判というきっかけがあったとはいえ)自分の意思で身を引いた。また、スコセッシ作品常連のロバート・デ・ニーロやジョー・ペシに比べると、本作の主演を務めたレイ・リオッタはやや存在感に欠ける。
穿った解釈だが、スコセッシの描く厳しい世界から淘汰された男、それがヘンリーであり、彼を演じるのもデ・ニーロなどでは到底ないという訳だ。アウトローへの憧れは私にもあるが、ヘンリーと一緒に生粋の悪人たちを眺め、笑っているくらいが丁度いいのかもしれない。
ミュージックビデオ的語り口、ズームイン&ズームアウトも心地よい作品。