エンプティーヘブン

花様年華のエンプティーヘブンのレビュー・感想・評価

花様年華(2000年製作の映画)
4.0
2020年11月7日 新文芸坐

チャウとチャン夫人を犯罪者のように表現している演出力が凄い。今より厳しかった当時の不倫というのは犯罪だと言っても過言ではない。それを2人の葛藤や罪悪感、周りの視線だけではなく、映像で表現している。

二人がよく会う場所がある。家の近くの建物の前だ。劇中では何度も登場するこの場所で明らかに2人を犯罪者のように見える演出をしている(と勝手に思っています)。2人はこの建物の前に立ち止まってよく会話をするのだが、彼らの後ろ側に大きい窓が見える。窓には大きな鉄格子が付いているのだが、その窓の前に立っている2人はまるで刑務所の中にいるかのようにカメラが捉えているだ。

最初はただ窓の前で撮っていたのに、2人の関係が深くなればなるほどカメラは鉄格子の向こう側、つまり建物の中から2人を捉えるようになる。鉄格子越しで撮られる2人の姿は(不倫をした)犯罪者に見えてしまうのだ。

振り返ってみると急に帰ってきた大家さんたちのせいでチャウの部屋に閉じ込められた2人の姿も自由を奪われた囚人に見えなくもない。声も自由に出せず。

やっぱりウォン・カーウァイは意味なくスタイリッシュさだけを追求しているとは思えない。昨日観た「恋する惑星」も良かったけど、本作はさらに良かった。

P.S. 2人がよく借りてた不倫部屋の部屋番号、「2046」でしたね。