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花様年華のKKMXのレビュー・感想・評価

花様年華(2000年製作の映画)
4.1
ため息が出るほど美しい映画でした。そして、セクシーな映画。

まず、主演のマギー・チャンが美しすぎる。愁いをたたえた儚い美貌。折れそうに華奢な身体を包むチャイナドレスの美しさ。その美しさを逃すまい、と映像があらゆる角度からマギー・チャンをとらえており、これがまたどの角度からでもその角度が持つ美しさが映し出される。
ここまでに美という文字を7回も使っていますが、美しいんだからしょうがない。美とは何か、と問われた時、「花様年華のマギー・チャン」とこれからは答えることにします。

本作のマギー・チャンは外側も極上に美しいけれど、その美の本質は内面というか彼女の態度にあると思います。人妻である彼女は、隣人トニー・レオンに恋しますが、一線を越えません。恋しくて恋しくてたまらないのに、越えない!この態度が彼女に気品を与えるのです。
この気品こそがセクシー!滲み出る妖艶さ。恋心を律しようとする色気がすごいです。気品こそが究極の官能美なのでは、と感じました。

それはトニー・レオンにも言えること。はじめはマギー・チャンの手を握ろうと頑張ったレオン氏だが拒否られ、そこから彼もストイックモードにシフトチェンジ。新聞に連載する小説を一緒に書こう、と誘って2人で小説を書き始めます。
ストイックに体に触れず、でも心では共同作業を始める2人。この、身を焦がす欲望に耐えながらも心では触れ合う関係、めちゃくちゃセクシーです。くぅ〜、最高!
小説の登場人物のロールプレイをしている最中にマギー・チャンの感情が決壊するシーンは、ホントたまらなかったです。美しすぎてため息でた。極上の恋物語です。

そしてそしてそして…恋が熱く燃え上がった2人は結局どうなる?その結末の描き方もとても美しくセクシーだと感じました。少しボヤかせたような描写ながら、よくよく観るとかなり丁寧に伏線が張られているような印象です。
終幕近くにある、レオン氏の一見唐突な行動も、少し前の何気ない会話が説明しているように思えます。
映画の技巧としても、極めて洗練された美しさを持った作品ではないでしょうか。同時期に上映されている「欲望の翼」は映画的洗練さに欠けており、本作を観た後だとあれは習作だったな、なんて感じます。

本来はもう少し脂っこく胃にもたれるような作品が好みですが
(直近だとスリー・ビルボードとか)
充分に記憶に残る観応えある映画だったな、と思います。
こんな繊細で美しい映画を撮ったのが、香港のおじさんというのもまたスゲー。世界中で言われていることですが、ウォン・カーウァイおじさん天才すぎるね。
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