ちろる

花様年華のちろるのレビュー・感想・評価

花様年華(2000年製作の映画)
4.3
アート映画ではないが、何もかもが計算されたように美しい作品。
まず、気怠く、哀しげなマギー チャンの美貌と、完璧なシルエットで身に纏う彼女のチャイナドレスがおしゃれで女性はまず、そこに目を奪われるはず。
少しグリーンがかった画面がセピアのような質感で、鮮やかな香港の街並みやインテリアと合わさることでハッとするようなウォン カーウァイ監督独自の色彩に仕上がっている。
構図の完璧さと、特に真っ赤な壁やカーテン、ランプの灯りなど鮮やかな色彩が印象的。トニー レオンが暗闇の中で吸うタバコの煙の表現さえも洒落ている。

アパートで隣同士になった2組の夫婦。
主人公の男の妻はいつも仕事が忙しく家事が疎かになりがち。
となりの家の美しい妻は頻繁に東京に出張に行く旦那の帰りをいつも一人で待っている。
互いに空虚な心とパートナーに対する不信感を抱えながらぎこちなく交流をしていくうちにいつしか秘密の時間を共ていくというお話。
蜜やかな感じというよりは一線は超えずあくまでも上品に関係は進み、背徳感は少ないからこそ後半のマギー チャンの溢れ出た感情に切なくなる。
ぎこちなく歩み寄った想いはなかなか実らない代わりに、なかなかその灯火は消えてくれない。
大人の恋愛故の厄介さに、遣る瀬無さを感じつつも、その純粋な想いの崇高さが守られていくラストの展開に少し安心してしまう自分もいた。
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