このレビューはネタバレを含みます
既婚の男女2人の危うい愛情が独特の色彩感覚、斬新な技法によって美しく描かれている。
そしてチャイナドレスやエキゾチックな風情が物語そのものや、2人の人物に艶美なニュアンスを与えている。
互いの結婚相手同士が不倫しているとわかり、いつも相手が家を空けて居ない寂しさから、あくまで妻、夫の代わりとして一線を越えない関係になる男と女。
ただ食事をして同じ部屋に居て、雨宿りをするだけの関係がなぜこんなにも艶やかに映るのだろうか。
自分と不倫相手に同じ品物を贈るようなご機嫌取りの愛情しかない結婚相手となんか、何度も予行したように別れてしまえたら、
何もかも捨て去って互いの唇に触れてしまえたらどんなに良かったか。
いつしか本気になった男がどんなに女を思えども、今となればあの関係はただ一瞬の華、煙のような一時でしかなくて、過ぎ去った日々は記憶のなかにだけ朧気に咲くのだった。