スズランテープ

黒い罠のスズランテープのレビュー・感想・評価

黒い罠(1958年製作の映画)
4.5
初オーソン・ウェルズ。
すげぇ。まぁ冒頭の長回しはわたしが語るまでもないことなので割愛。何を差し引いても映像表現!画面の中でストーリーを展開させるのが非常に上手い。冒頭の長回しもただ長回しをしているわけではなくて、スリリングにストーリーを前に引っ張りつつ、技巧的なのが良い。(結局は割愛してねーじゃん)電話しながら後ろの窓で一悶着あったり、ああいう演出がある映画が好きなの。


ディープフォーカスを多用しつつそこを起点として長回しを展開していく手法も面白かった。ディープフォーカスからのクローズアップみたいな撮り方がシーン全体を引き締めて、重要なシーンが引き立てられていた。

とにかくフレーム内に必要な情報がシュッと収まっていてそれを長回しと大胆なカメラワークで次から次へと見せていく。さらに役者の存在感と演技がそこに加わり、かっこよすぎる照明がそれを引き立てる。視覚的な面と技術的な面だけ見ても天才としか言いようがないし、役者としてもとんでもない存在感を放つオーソンウェルズの偉大さをこれでもかと見せつけられました。

ただ正直な感想を話すと序盤中盤は割と退屈に感じたシーンが多かった。視覚的な面では飽きることがないんだけど、ストーリーの運び方や映画のテンポは悪い意味で古臭く、エンタメ性は低め。1時間半だけど体感は2時間くらいに感じた。ただ脚本はめちゃくちゃ素晴らしいので、そこをじっくり堪能したい大人な鑑賞がしたい人向け。単純に面白いノワールが見たかったら、フリッツ・ラングとかの方が盤石なのかなと思ったり・・・

ただ終盤のノワール味溢れる演出には痺れさせられた。特にクライマックスはこれぞノワール!!!って叫びたくなる雰囲気。

上質な正統派ノワールって感じの映画。
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