平々

ヒミズの平々のレビュー・感想・評価

ヒミズ(2011年製作の映画)
3.8
前評判通り主演2人の演技は素晴らしかったです。しかし原作を先に読んでいたのでやはり改変部分が気になりました。映画版の舞台は震災後の日本で主人公や周りの人間は震災や原発問題にもろ影響を受けています。公開は2012年ということで東日本大地震の翌年。原作と異なる映画版のラストは被災者に希望を与える形となっています。しかし原作で住田が最後に死を選んだのは辛く苦しい現実に絶望したからではなく、自分が定めたルールから逃れられず、死(怪物)を選ばざるをえなかったからです。住田の行動の意味が原作と映画版で全く異なります。観客に希望を与えるという意味では素晴らしい作品だと言えますが作品の根幹をなす部分が異なるので、もはやヒミズの実写化ではなく、似て非なるオリジナル作品として放映しても良かったのではないかとも思います。また他に納得のいかなかった点として住田の行動に影響を及ぼした思想や価値観が十分に描かれていなかったことが挙げられます。129分という尺に収めなければいけないので全てを描写するのは不可能ですがヒミズの良さは住田という人間に凝縮されていると思うので、もう少し深掘りして欲しかったです。あと茶沢さんが不思議ちゃんと化していたことも違和感がありました。あれじゃあ住田がこの娘を好きになる理由がわかりません。実際茶沢さんは初めから住田のことが好きでしたが住田はどのタイミングで茶沢さんのことを好きになったのでしょうか。そのせいで2人が涙ながらに結婚した未来を夢見るシーンでは全く感情移入できませんでした。ただ茶沢さんの悲惨な家庭環境を描いたのは良かったと思います。原作では茶沢さんのバックストーリーはほとんど描かれず学校と住田といる時の彼女しか知ることができないので彼女が何故住田に執着するかがわかりませんでした。古谷実の作品には毎回主人公に好意を寄せるヒロインが登場しますが主人公を好きになった経緯がわかりにくいところがあります。原作通りではなかったものの、改変が良さを発揮した部分と蛇足なシーン両方がありました。原作とは別個の作品として見るのが賢明かもしれません。映画版しか見ていない方は是非原作と読むこともオススメします。
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