矢吹

ヒミズの矢吹のレビュー・感想・評価

ヒミズ(2011年製作の映画)
3.9
「おれにはわかる。
自分のこと以外は。
要するになんだってわかる。
自分のこと以外なら。」

お前が生まれたばっかりによ。
保険が降りて楽になるから早く死ね。
親に愛されていない2人の中学生。

学校では教えてくれる。
「夢を持て、みんな特別なたったひとつの花なんだ。日本は頑張って立ち直るんだ。未来は明るい。頑張れ住田。」
とんでもなく綺麗事に聞こえる。
多分これは、未来を明るいとしか言えないから。

大きな幸福も不幸もなく、普通に生きて、立派な大人になれればいい。

それでも、
震災があって、親からは生きることを望まれず、親父の借金にも巻き込まれ、社会には善悪もへったくれもない。

頑張ってもどうにもならないことやどうしようもないことはこの世に沢山ある。

あるんだが、
自分のルールにがんじがらめになったり、現在の閉塞にとらわれてはいけない。
未来は多分、暗いし、明るい。明るいし、暗い。ひとつじゃない。道は無数にある。時間はたっぷりとある。

教室で先生が嘯く言葉と、ラストで走りながら叫ぶ言葉は同じ。
言葉は同じ。
同じ言葉で持って、痛烈に、強烈に、否定する。

それでなくとも、
「言葉」が重要な映画だったと思う。

住田くん語録を集める茶沢。
彼の言葉を愛する。彼の言葉に囲まれる。言葉は彼の代わりになる。彼女がその言葉を言えば、その時、彼女は彼になる。

茶沢の家庭の中での演技的なセリフも印象的。
親と子の演技をする親子。
「お前の父親どこいった。お前の母親腹減った。」

人間関係とは所詮、演技であるとも言われるように。
言葉の重たさを改めて感じた。大事に使いたいな。

要所要所で流れる不気味な音楽が最高ね。教会にいるかのような感覚の、懺悔の前のような音楽が、効果は抜群だ。

茶ざわのパンツ丸出しっぷりの転がりっぷり最高。

俳句575ゲーム。やってみたいな。あと、途中で出てくるゴミ出し女。最高。なんやあれ。

「いってきます。いって、また帰ってきます。」等々、台詞回しがお気に入った。

「頑張れ住田。住田頑張れ!頑張れ!頑張れ!夢を持て!この世でたったひとつの花よ!頑張れ!住田頑張れ!」

瓦礫。震災。原発。
冷たい冷たい風の音。
震災特需と賠償金バブル。
ATM、車荒らし。

見るのは今回で3回目になります。
見るたびにとてもポジティブな映画だなと感じる。
震災を受けて、原作とは結末が違うらしいですね。
原作読みます。
展開的には多分、そっちの方が好みなんですが、全く別物と捉えてみて、わたくしはこのラストシーンは大好きです。
矢吹

矢吹