つるみん

KAMIKAZE TAXIのつるみんのレビュー・感想・評価

KAMIKAZE TAXI(1995年製作の映画)
5.0
冒頭に
『今、日本には約15万人の日系外国人労働者と、約9万人のヤクザと、歴史を正しく伝えられない政治家がいる。極めて稀だが、彼らが知り合う事もある。』という文が出てくる。この文体に仕掛けられたユーモラスな表現と移民問題や新興宗教、そして政治家の汚職などといった今も尚、考えなければならないシリアスな表現が組み込まれているという色んな物事が詰まった非常に衝撃的な文である。

ここで僕は完全に惹きこまれた。
とてつもない映画が始まるぞ。と…


内容は、
恋人を殺されたヤクザになり切れてない達夫が復讐を企て実行するものの決して成功とは言えない結果に終わりヤクザに追われる。逃亡中に出会った日系ペルー人のタクシードライバー寒竹に出会い、彼らのロードムービーが始まる。

シリアスな社会問題をしっかり捉えつつも時おりシュールな笑いで我々を和ませてくれる。冒頭の文体がいかに重要であり軸となるかが理解できる。

そして何と言っても俳優陣の演技力には脱帽だ。
特に役所広司とミッキー・カーチス。
役所広司の日系ペルー人の寒竹役はカタコトな日本語から生まれる優しさや温かさがある。
一方、ミッキー・カーチスはヤクザの亜仁丸を演じた。冷酷非道なその人物は雰囲気を一変させる。

だからこそ最後は物凄い場面であるのだ。温厚地質な寒竹と冷酷非道な亜仁丸のキャラが反転する。ここに全てが詰まっている。
竹やぶの中の場面は本作を締めくくる名シーンであり、亜仁丸の白い吐息がその場の雰囲気の冷たさ、気温の寒さを物語っている。
〝寒さを感じる竹やぶの中〟まさに主人公の名前通りのラストシーンとなっていた。


戦争を経験してない、ましてや僕のような〝歴史〟をまだよく理解してない若者こそ観るべき映画である事を伝えておく。
つるみん

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