チッコーネ

ポリー・マグーお前は誰だのチッコーネのレビュー・感想・評価

ポリー・マグーお前は誰だ(1966年製作の映画)
2.7
近年量産されているファッション映画の、先駆的な作品といった趣。
監督はファッション・カメラマンとして世に出た人物なので、いくつかの場面で優れた美術/美粧が見られる。
また映画的には無名な業界セレブを客演させるという手法も、時代を先取りしている。

とは言えもっとヒップな映像がレイヤーとなった内容を期待していたので、フィクション部分が大半なのにはがっかりだ。
脚本や編集は凡庸なドラマを目指していないものの、当時流行のヌーヴェルバーグを完全に踏襲するアプローチで、日本での配給がATGだったのも納得。
全く魅力のない男性俳優陣が屁理屈を並べるが、とどのつまり「スーパーモデルのあなたは、なぜ中身もないのにこれほどチヤホヤされているのか、わかっていますか?」という極オヤジ的な質問をしたいだけというのは、死ぬほど退屈である。
対して女優たちは、イキイキと画面を牽引していく。
特に当時のヴォーグ編集長、ダイアナ・ヴリーランドをモデルにした役柄を演じるグレイソン・ホールのエキセントリックな怪演は、非常に楽しい。

総じて監督はファッション業界での成功を楽しみつつも、ハイプが蠢く内実に、心底うんざりしていたのだろう。
皮肉な視点が優勢となって全体を覆い、題材が持つ本来のポテンシャルを大幅に後退させてしまっているのは、かなり残念だ。