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何がなんでも首ったけのukigumo09のレビュー・感想・評価

何がなんでも首ったけ(1961年製作の映画)
3.3
1961年のロジェ・ヴァディム監督作品。ロジェ・ヴァディムと本作の主役のブリジット・バルドーといえば、バルドーが18歳になった1952年に結婚していたことでお馴染みの2人だ。ヴァディムは1956年に妻バルドーを主演に『素直な悪女』で映画監督デビューを飾る。3人の男を手玉に取ってしまうバルドーの小悪魔ぶりがとてもキュートで話題になった作品だ。冒頭のシーツ越しのヌードなど、バルドーにセックスシンボルというイメージを定着させた作品である。しかしバルドーが『素直な悪女』の出演者であるジャン=ルイ・トランティニャンと恋に落ちてしまい1957年に2人は離婚している。
『何がなんでも首ったけ』は元々ジャン・オーレルが監督するはずだった作品で、途中で降板となり、バルドーの事をよく知っており綺麗に撮ることに長けたロジェ・ヴァディムが後を引き継いでいる。オーレルの名前は脚本としてクレジットに残っている。

売れっ子カバーガールのソフィー(ブリジット・バルドー)は有望な若手カメラマンで恋人のフィリップ(ジャック・リベロル)のおかげで今の地位がある。彼女は早くフィリップと結婚したいと思っていた。一方フィリップはそんな気はなさそうだ。それもそのはず、フィリップにはアメリカの富豪の娘バルバラ(ジョセフィーヌ・ジェームズ)という気になる女性がいたからだ。それを知ってしまったソフィーは激高し、猟銃を持ちだし恋敵を撃つと息巻く始末。偶然知り合った医学生アラン(ミシェル・シュボール)が説得しなんとか収まるが、そのアランはソフィーの美貌に一撃で惚れてしまう。
フィリップとバルバラは冬の雪山観光のためにビラールヘ行く。その後を追ってアランと、相変わらず猟銃を抱えたソフィーもビラールへ向かう。アランはソフィーに、恋人に嫉妬心を抱かせるためにフィリップの前でわざと仲良くふるまうようにアドバイスする。もちろんアランにはアランの思惑があるのだがソフィーはしっかり言われたことを守る。アランとソフィーがホテルの部屋でダンスを踊り、そのまま2人がベッドへ、という瞬間にデカい犬が割って入るおとぼけシーンなど最高だ。その後ナイトクラブで酒を飲みながらソフィーが踊るのを見つめるアランは半分妄想の世界に入ってしまう。画面がぼんやりして輪郭がはっきりしない中、ソフィーは裸で踊っている。男の妄想を具現化した興味深いシーンだ。撮影には全身タイツのようなものを着用して撮っているのだがぼやけた画像ゆえに本当に全裸なのではと思わせるヴァディム演出である。

2組のカップルが最後は収まるところに収まるのだが、ソフィーの部屋とバルバラの部屋の様子が画面分割で描かれる。最初は半分のところで分割されていた画面が、ソフィーの動きに合わせるように、6:4や2:8のようにサイズを変えていき、最後はすべてがソフィーの部屋になる。
この映画はブリジット・バルドーの素晴らしさを知り尽くす監督によるブリジット・バルドーを愛でるための映画である。
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