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首のHKのレビュー・感想・評価

(1968年製作の映画)
3.7
弁護士の正木ひろしが書いた小説を「日本沈没」「八甲田山」などの森谷司朗が実写映画化。キャストは小林桂樹、古山桂治、などなど

戦時中の1944年、茨城県の長倉村というところで炭鉱労働者として働く男が、違法賭博の嫌疑をかけられ逮捕、勾留中に脳溢血で死亡するという事件が発生する。主人公の正木ひろしは、初めは公安や地検を信じ事務的に作業を進めていたが、検察側の雑な対応で疑心暗鬼になり、ついに死因を解明するために埋葬された遺体から首を切断し、東京の医大に秘密裏に搬送することを決意する。

小林桂樹さんの過去作をあまり観ることがなく、今回そのような作品をぜひとも見てみたいと思って見てみました。

正直言うと、前半から中盤までは、会話劇主体のためか、ちょっとばかり眠くなりました。森谷司朗監督の悪い癖なのかもしれませんね。それでも小林桂樹さんの迫真の演技も相まって、かなり緊張感は持続した内容となっていました。

初めは、そこらにいるただの弁護士であった正木が、終盤に行くにつれて段々と人間不信というか、社会に対して不信感を募らさせていく過程を、戦争などの時代背景を掲げながら語っていく様は見事。ただ、公権力が腐敗してしまうことは、資本主義のこの世の中では致し方ないのかもしれません。

後半ついに覚悟を決め、医大の研究生を引き連れて墓地に赴くシーンなどもモノクロ映像によるせいか、暗くそして見つかるか見つからないかという不安を煽る展開でとても良かったと思います。

一番良かったのは、電車内での持ち物検査のところですね。医大生が有能すぎて笑いました。正直に答えることで敢えて馬鹿と思わせて駅員や警察の捜査を掻い潜る所は愉快痛快である。

そして、最後は、「彼は戦後も対照的に変わらなかった。」とナレーションしながらも、裁判に首を持っていくという基〇外染みた行動をしてしまって「変わってるじゃないかww」と思う始末。やっぱり戦争はいけないものだと分かってよかったと思います。

森谷司朗監督作品をもっと見てみたいですね。
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