しろいはなび

こま撮りえいが こまねこのしろいはなびのレビュー・感想・評価

こま撮りえいが こまねこ(2006年製作の映画)
4.0
・お仕事場のお姉さんと仕事中の雑談でこの作品の話が出てきて「面白いから見て」と貸していただいた作品。

どこまでも優しい世界。こんな優しい世界があるなんて。直前に見ていた作品が、ブラック企業に自殺に追い込まれた夫のために妻が派遣社員として夫の勤めていた会社に入社し夫の死に関わった者たちに復讐の鉄槌を下していく勧善懲悪物語で、ラストは自分を置いて旅立った夫への復讐として、後輩と再婚する、すごく爽快な作品だったので、その落差もあってやばい。

・こまねこと言うクマみたいなネコのような、ネコが人形でコマ撮りアニメを作ろうとする話や、雪男に会って友情を育む話、シンプルながら寓意に満ちた優しい作品だ。どれくらい優しいかと言えば、優しすぎてそのまま寝落ちしてしまうぐらい優しい。(変な体勢で寝たので見たのは悪夢だったけれど)


・人生にたいして寂寥感を感じている女性は猫を飼っている、というのがわたしの経験則から弾き出された法則なのだけれどなんとなく飼うひとの気持ちが分かった気がする。猫に表象される何かというのは孤独を感じる人間の何かを癒す傾向があるのだと思う。

・実際コマ撮りの技術はとても高い、ように感じた。自分にはコマ撮りっぽさを感じることはなく、本当に生きた生き物が動いているように見えた。それに一つ一つの動作や表情が細かく、愛苦しい。

・このアニメがコマ撮りだということを忘れてしまうくらい自然に動いているのだけれど一秒動かすためには24枚のコマが必要なので一分の映像を作るのに1024枚のフィルムが必要で一時間には10240枚ものフィルムを撮影しなければならない。考えただけでも気が遠くなるような撮影枚数を重ねなければならない。この世界には存在しないコマ猫に命を吹き込むには途方もない努力が必要になる。それだけではない、小道具や背景も誰かの手によって作られている。誰かが技術を使って用意しなければこの世界は存在しないのだ。そう考えると萌えアニメの一本二本くらい放送を落とそうとも自らの瞬間的な快楽のために叩きのめすというのも……なんとも酷なことだよな、とか。