にくそん

風たちの午後のにくそんのレビュー・感想・評価

風たちの午後(1980年製作の映画)
3.9
セリフがよく聞き取れない。最初はそれが気になったけど、そのうち、だいたい聞けたらいいような感覚になった。近所で遊ぶ子どもたちの声とか、蛇口から垂れる水滴の音とか、そういうのはよく聞こえる。上映当時の設計とは違うのかもしれないけど、これはこれで不思議な効果を生んだ気がする。

見ている間ずっと、さみしい気分だった。夏子の片思いがあまりに鮮烈で、知らず知らず夏子側に立って見ていたんだと思う。好きな人に好きになってもらえないってありふれた絶望だけど、乗り越えるのはまあ難しい。夏子のアイドル顔と過激な行動のギャップが、ちょっと怖くて、その何倍も悲しかった。

美津は気さくで誰にでも優しくて、オシャレでタバコを吸う姿もさまになって、いかにもモテそう。一度この人をいいなと思ったら、いいところがざくざく出てきて、何度会ってもときめく瞬間がある。そういう引力のある人なんだろうと思う。これは嫌いになれない。というか、好きではなくなれない。夏子もかわいそうに。

夏子役の綾せつこさんは検索しても他の作品が出てこないし、美津役の伊藤奈穂美さんは日活ロマンポルノが1本出てくるだけ。惜しい。40年も経って勝手に惜しむなよって話だけど。そういえばエンドロールに内藤剛志さんの名前も出てきた。どこにいたのかはわからなかった。
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