蓼食う虫

SHOAH ショアの蓼食う虫のレビュー・感想・評価

SHOAH ショア(1985年製作の映画)
5.0
昔、アナログBS放送が始まった頃のマイナー映画放送黄金期にテレビでやっていたのが信じられない。

一度しか見ていないが、心底打ちのめされた。
かなり長く内容も重いので、
万人には到底おススメできないが、
時間と余裕のある学生のうちに一度見ておくとよいかも。

子供の頃の記憶なので不正確かもしれないが、
捕まえたゲンゴロウとカエルを同じ水槽の中に入れていたところ、
気が付くとカエルが手足を伸ばしたまま水面にぷっかり浮いていて、
腹の部分だけがスプーンでくり抜かれたように
なくなっていた。

大袈裟&ヘンテコな喩えで恥ずかしいが、
この映画を見て受けた衝撃は、
思わずこのカエルを想起するような、
はらわたを丸ごと抉られるような感覚だった。

イスラエルの過激なまでの政策に批判的な人も多いし、自分も引くレベルだが、これほどまでに長きに亘り徹底的に虐め抜かれた民族が他にあるだろうか(いや、中にはあるんだろうけど、ユダヤ人にはそれを語り継ぐだけの知性と情念があったということなのかもしれない)。

安易な想像を拒絶するレベルの酷薄な経験をした彼らのうち、戦後生き延びた後になってその辛さに耐えきれず自ら命を絶った人もいる。インタビューに答える人々も、その苛烈な記憶とともに生きている様子だった。

冒頭の船歌が印象的。
あと、理容師が家族に散髪するシーン。
悲しいとかキツいとかいう言葉ではとても言い尽くせない…。

ランズマンはシオニズムに偏りすぎているとの批判もあるようだし、彼の他の作品もバンドルされたセットは封も開けずに置いたままだが、本作とともにいつか死ぬまでにじっくり見て、自分なりに判断したい。できれば書籍もいくつか読みながら。しかし、グッタリとダメージを受けそうで、なかなか見れずにいる。

ひとまずメモ
蓼食う虫

蓼食う虫