ごろちん

SHOAH ショアのごろちんのレビュー・感想・評価

SHOAH ショア(1985年製作の映画)
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線路の先に在るもの。希望ではなく絶望。

ホロコーストを扱った映画はたくさんあるけど、記録映画は数えるほど。この作品はランズマン監督が11年の歳月をかけて40人以上の体験者・関係者にインタビューして記録したドキュメンタリー。

映し出されるのは、感情を閉ざしたかのように薄笑いを浮かべながら話す生還者、自己弁護を訥々と語る元SS伍長、話を切り出そうとするたび思い出して嗚咽するポーランド亡命政府の元密使など。

「あれは人間が住む世界ではなかった」と証言者が語るように、アウシュビッツでの出来事はまさに悪夢。彼らの目の奥には凄まじい光景が焼き付いている。

ところで、この作品が持つ意義って何だろう。

例えば、アウシュビッツの凄惨な映像を集めたアラン・レネ監督『夜と霧』は視覚からダイレクトに感情へ訴えてくる。その点『ショア』は、アウシュビッツの跡地と証言者の映像のみ。視覚から凄惨さは伝わって来ない。

思うに、この作品には体験者本人の口から出た嘘偽りない証言であるという記録的意義もさることながら、「人間の感情」を露わにした体験者を映し出すことで、世紀の蛮行を直接知らない後世の人々が想像を働かせて関心を抱くようになる、という意義があるように感じた。

この作品、どうしても観たくてDVD購入しちゃいました。驚くのは9時間27分というとんでもない長さ!本当はオールナイト上映で一気に観たかった作品なんだけど、映画館で観たらたぶん、いや間違いなく朝まで爆睡してただろうなー。
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