じぇいらふ

忠次旅日記 御用篇のじぇいらふのレビュー・感想・評価

忠次旅日記 御用篇(1927年製作の映画)
5.0
昔から観たかったのになかなか観ることができなかった作品をついに観ることができて感慨深い😂
この作品は1927年当時のキネ旬ベストワンの1位になった(というかキネ旬って古くからあるんだな)、伊藤大輔監督の戦前無声映画時代の最高傑作!と名高い作品。

長い間フィルムが残ってないということで、観ることができない幻の傑作となってましたが、1991年に民家の倉庫からフィルムが発見されて、修復を重ねてようやく観ることが出来たということです。
発見当時ニュースになって、観たい!観たい😆と思ったものの、国立フィルムセンター所蔵で数える位しか上映機会がなくて、なかなか観ること叶いませんでした😭
ようやく今回日活110周年記念Blu-rayとして、販売されて誰でも観ることが出来る作品となりました。ありがたし!!😂そして作品は、、、やっぱり素晴らしい👍👍👍👍👍

同時収録の『長恨』(これも良かった!)と同じく発見されたのは作品の一部で、『忠次旅日記』は全3部作ですが、2部の一部と3部の全てが観ることができます。
全6話のドラマを3話と5話6話だけ観る感じです笑。なのでストーリーの補完が必要ですが、これだけ観ても楽しめるように上手く編集されてます。

忠次三部曲 前回のあらすじ 追われて子供と共に信州に落ち延びる忠次〜はじまり、、、暗闇に浮かぶ国定忠治くるり、なんかカッコいいぞ❗️

○第2部信州血笑編(血で笑うて凄いタイトル😆)
赤城の山でお尋ね者となり子分達と別れた忠次は、子分の一人勘助の遺児幼い勘太郎と二人で逃亡し続けていたが限界を感じ、嘗て世話になった信州の顔役壁安左衛門に勘太郎を預かってもらうようお願いする。。。というおはなし(のところだけ)



○第3部御用編
越後長岡の造り酒屋澤田屋に番頭として潜伏していた忠次は、束の間の平穏な時期を過ごしていたが、澤田屋のドラ息子のやらかしに巻き込まれて素性がバレてしまう。。。というおはなし

これら2部と3部を上手くつなげて一つの作品にしてます。
発見されたフィルムは色々足りないところが多いので、字幕を追加したりしてなるべく鑑賞しやすい形になってます。

活弁士:坂本頼光さんの名弁士ぶりが素晴らしく、やっぱり無声映画時代は活弁上映が普通だし、そのつもりで作られているので、活弁音声付きで観るのが一番です。

なんといってもこの作品は、国定忠治:大河内傳次郎が本当に素晴らしきです。『長恨』のような凄まじい剣劇乱闘シーンはさほどないですが、信じていた子分達に裏切られる悲しき忠次、可愛い勘太郎と別れたのもの会いたくて狂いそうになる忠次、澤田屋番頭として素性を隠している時の別人のように振る舞う忠次等々、いろんな感情表現にやっぱりすごい役者だなあと思います。当時としても一応歴史上のヒーロー国定忠治を、仲間に裏切られ、だんだん落ちぶれていくリアルな忠次像が新鮮だったようです。

子供達のわらべ唄遊びのシーンがとても可愛らしくていいです。勘太郎めっちゃクリクリヘアースタイルかわいいです。

もう一人、映画の後半に出てくる忠次の妻お品:伏見直江がいいです。作品の後半では子分達を前に凄い迫力で裏切り者をあぶり出すシーンがすばらしい。目力ヤバい👀ほとんど終わりの方彼女が持って行っちゃう感じです。懐からピストルを出す、親分の情婦役、なんとこの時若干19歳だというから驚き?!その後、大河内傳次郎と何本もコンビで作品に出続け大人気女優になります。さながらハンフリー・ボガード&ローレン・バコールの日本版みたいです。カッコいい❗️

第3部御用編は、伊藤大輔と数々の名作を作ってきた伝説の名キャメラマン唐沢弘光です。巨大な酒蔵のユニークな背景とか、地下で子分達と対峙するお品にスポットライトがかかる様に捕らえるシーンとかとか、とにかく絵がシャープでかっこいいす。

作品は落ちぶれていく忠次の悲しさがあるものの、場面場面はコミカルなシーンもあって、キチンとエンターテインメントしています。坂本頼光さんの活弁がとにかくいいので、作品が一部しか観られないとしても、十分楽しむことができます。やっぱり歴史的傑作であることがわかる。Blu-rayで誰もが見れるようになったのですから、是非見て欲しい作品ですね。


。。。監督脚本:伊藤大輔、撮影:唐沢弘光、主演:大河内傳次郎&伏見直江という黄金カルテットの作品はその後いくつか作られるのですが、完全な形で残っているのは『御誂次郎吉格子』(これも傑作)だけなのは寂しい。自分が一番観たいやつ、大河内傳次郎と言えばの丹下左膳モノ『新版大岡政談』が発見されないかなあ、、、これと山中貞雄の別の作品とか発見されて観られたらもう死んでもいいす笑