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踊る大紐育(ニューヨーク)のくりふのレビュー・感想・評価

3.0
【ジャワ原人紐育にあらわる】

先日『パリ・オペラ座バレエ シネマ「ジェローム・ロビンズ・トリビュート」』を見たら、本作の元となった演目『ファンシー・フリー』の上演もあり、アホらしくも洒落ててよかったのです。で、そういえば本作、見ていなかったな…と興味がわいたので、アマプラにて。

酒場での水兵ナンパ騒動を、美脚がサラリとさらう一幕『ファンシー・フリー』が評判となり、ブロードウェイ・ミュージカルに発展し、さらに大幅な変更を経ての、この映画化。とりあえず楽しい…だろ!と押しまくる圧パワーはスゴイです。

1949年作、まだ続いていたのでしょう…戦勝国の無邪気な傲慢。水兵トリオ、陸に上がって好き勝手やるの巻。しかしNYは広く水兵はちっこく、エンパイアステートビルに登っても、キングコングのような大騒動は起きないのでした。

ダンスパフォーマンスとしては『ファンシー・フリー』で充分でした。映画は、トリオに無理やり彼女を充てがって、三組のカップルでっち上げ、物語も引き伸ばした感があります。

NY観光地巡りの要素はあって、現地ロケもしているから、そこへ行くと、眼は楽しい。

で、定番展開つづく中、博物館のシーンだけがだはは、いまでもオモロイやと思った。

メインはジーン・ケリーの即席恋バナだろうけど、原始人から始まる恋…いちばん出番が少ないアン・ミラーがいちばん魅力的だし、彼らジャワ・カップルのエピが断然、オモロイ。

必殺技・美脚タップダンスも披露するし、ダンサーとしても、アン姐さんが飛び抜けています。学者女子であれだけ踊れるって、能あり過ぎ鷹爪隠さな過ぎって話ですが。芸能界で苦労している第一ヒロイン、立つ瀬がないよね。

そのヴェラ=エレンさんは私、お初でした。有名作にもそこそこ出ているようですね。そのダンス力を買われてでしょうが、アン姐さんと並んじゃうと…。

可愛らしく家庭的?な個性で、50年代に向かうアメリカのヒロインには相応しかったのかもですが、ちょっちヘチャ過ぎません?私は知り合いのオッサンに似ているため萎えました。

美醜関連ではそんな一方、ブス女優にブス演技をさせて男たちに顔をしかめさせ、女たちは見てみぬふりをするという…時代を感じる人でなし演出に、鬱な感動をいたしました。

等々、色々引っかかりはしたものの、当たったそうなので、当時の娯楽映画としては、こんな仕上がりで正解だったのでしょう。

水兵が暴れる映画は昔、たくさんあったような気がしますが、ルーツがどの辺りなのか、知りたくなりましたね。

<2022.6.30記>
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