Eirain

ザ・ブルード/怒りのメタファーのEirainのレビュー・感想・評価

3.6
鬼才・デヴィッド・クローネンバーグ監督の初期名作。2KレストアBlu-rayが発売されたので、購入して鑑賞。

精神疾患を患うノーラは、隔離された郊外で、精神科医ラグランによる"サイコ・プラズミック療法(=抑圧された感情を発散させて、精神疾患を癒す(?))"を受けていたが、夫であるフランクは、その効果に疑問を感じていた。娘キャンディスの親権が妻に有利にあったため、渋々ながら定期的に娘を妻に会わせていたが、ある日、キャンディスの背中にいくつもの痣があるのを見つける。妻ノーラが娘との面会中に暴力を振るっているとして、フランクは娘を妻に面会させることを拒絶する。それをきっかけに"怒り"を"露わ"にするノーラ。そして、フランクの周囲では謎の暴行殺人事件が発生し――――。

現実世界で前妻との親権問題で悩まされていたクローネンバーグ監督の"怒り"が具現化した作品。クローネンバーグ監督の前妻に対する思いがこれでもかという程伝わってくる。(最早、前妻は"化け物"扱いという・・・。)

それはさておき。事件の真相がはっきりと分かるのが丁度良い終盤のタイミングとなっているため、ホラー要素だけではなく、ミステリー要素もしっかりと楽しめる。そして真実が明かされるとともに、襲い掛かる衝撃の映像!『ラビッド』同様、クローネンバーグ監督の構成力が光る作品となっている。

これまでは、クローネンバーグ監督と言えば『スキャナーズ』という認識だったが、同じ初期作品である今作や『ラビッド』の方が作品としての出来が良いと実感。せっかくなので、『ザ・フライ』までの初期名作は見直しておきたいところだ。
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