ろ

ガス燈のろのレビュー・感想・評価

ガス燈(1944年製作の映画)
5.0

叔母を亡くしたポーラは、心の傷を癒すために訪れたイタリアで音楽家のグレゴリーと恋に落ちる。
ロンドンに戻り、叔母が残した家で新婚生活を始めるが・・・

バッグから一度も出さなかったはずのカメオは消え、外した覚えのない壁画は廊下の隅に置かれている。確かに読んだはずの手紙。覚えのない懐中時計。
「ポーラ、また失くしたのか。また忘れたのか」
夫は彼女の外出を許さず、家の中で過ごす時間が長くなるにつれて、ポーラは自分の記憶を信じられなくなっていく。

新たに火を灯したかのように、小さくすぼむガス燈の灯り。
毎晩ポーラの部屋が暗くなると、誰もいないはずの屋根裏部屋から足音が聞こえる。
「わたし、この家が怖いのよ。夜になるとあちこちから物音がするの」
「朝になったらよくなるといいね」
怯える妻を冷たくあしらう夫は今日も仕事に出掛ける。
「奥様、気のせいですよ。何も聞こえやしません」
耳の遠いメイドはポーラの背をさすりながらミルクを運ぶ。

次第に追い詰められていくポーラ。そこへ一人の刑事が訪ねてくる。彼は10年前に叔母が殺された事件を再捜査しているという。
あの物音もこの刑事もポーラの妄想なのか。それとも・・・

ガス燈がつくるポーラとグレゴリーのミステリアスな影。
音楽会の息を呑む緊張感、そして病気を逆手に取った鮮やかなラストシーンがたまらなく気持ちいい!
灯りが細く小さく、部屋はグッと薄暗くなり、ポーラの怯えきった目がきらりと光る。たまらず「エリザべッ、エリザべッ!」と階段に向かってメイドの名前を叫ぶバーグマンのモノマネを、この映画を見るたびに母から聞かされています( ˘ω˘ )「ウェル、ウェル」のご近所おばあちゃんもいいよね。
ろ