2月6日は私の敬愛するフランス映画監督フランソワ・トリュフォーのお誕生日です!
生きていれば今日で86歳に。
実話に基づく『アヴェロンの野性児』の映画化に乗り出したトリュフォーは本作で、野性児ヴィクトールの教育に奮闘するイタール博士役を自らが演じています。
何らかの理由で森に棄てられ、野生の中で何年もの間ひとり生き抜いてきた野性児ヴィクトール。
そんな彼に根気強く人間性を教授してゆくイタールの記録は、
かつて母親に育児放棄された少年時代のトリュフォーと、彼の保護者として救い出してくれた映画批評家アンドレ・バザンとの記憶と重なります。
バザンがトリュフォーを映画の世界へと導いた精神的父親であったように、本作ではトリュフォー自身がヴィクトールの父親的存在として教育する姿が描かれ、
それは云わば代表作『大人は判ってくれない』と対を成す自伝的作品でもあるのです。
またトリュフォーは劇中でヴィクトール役のジャン=ピエール・カルゴル君に演技指導をする際、
『大人は判ってくれない』で自らの分身を演じてくれたドワネル役レオ君との思い出が幾度となく甦ったそうで、
冒頭には「ジャン=ピエール・レオのために」という献辞が添えられることに。
まるでドキュメンタリーのような記録映画の体を成す作風で、
人間性の欠如から始まるヴィクトールはまるでカスパー・ハウザーのようであり、
家政婦ゲラン夫人と共に彼を教育するイタール博士はさながらアン・サリヴァンのようでもあったり。
そして本作で魅せたトリュフォーの学者役により、彼はその後スピルバーグ監督『未知との遭遇』でも重要な学者役を演じることにもなるのでした。