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ベルヴィル・ランデブーのneroのレビュー・感想・評価

ベルヴィル・ランデブー(2002年製作の映画)
4.5
「若おかみは小学生!」の地上波放送から監督つながりの「茄子」2本を経て、自転車つながりで本作へというコロナ記念・ひとりアニメーションマラソン。
実はこの作品はジブリのライブラリーとしてリリースされている。ジブリはみんなでツール見物に行くくらい自転車好きが多いそうなので、このセレクトも当然なのだろう。もちろんアニメーションとしても超一級だ。

シルヴァン・ショメの趣味全開・・・としか思えない。フランス人の基礎教養でもあるのだろう。1960年代後半のツール・ド・フランス、というよりロードレースそのものの描写の細かさにひたすら見入ってしまう。
絵のデフォルメ幅は大きいが、そのディテール描写には一切妥協はない。ヒラメ筋も見事な孫息子シャンピオンが駆る、まだフロント一枚のロードレーサーのホイールはウィングナット締めだし、センタープルのキャリパーブレーキにディレーラーもエンド直付けじゃない。ばあちゃんが見せるリムの振れ取りの名人技にはもう口あんぐり。自転車好きにとってはたまらんよ。

ストーリーもかなり練り込まれている。ツールの山岳ステージでリタイアしたシャンピオンは、謎の男たちに拉致され海を渡って大都会ベルヴィルへ。マフィアの賭け自転車レースマシンのコマにされてしまう。追うばあちゃんと犬のブルーノも足漕ぎボートで大西洋を横断! 怪しい3人のばあさん達と出会ってシャンピオン救出作戦を決行、というハードボイルド風味まで香ばしい、ばあちゃんズ冒険物語だ。

とにかく台詞がほとんどない。「イリュージョニスト」よりさらに少なく、歌は別にして、ニュースキャスター以外ほぼ一言も喋らない。それでいて物語の背景も展開も実に自然に入り込んでくる。構成・演出は絶品だ。

もっともこの作品で一番好きなのは3つ子のばあちゃんトリプレット! 冒頭のステージシーンは素晴らしすぎて何度見たかわからない。ニューヨークがモデルなのだろうベルヴィルの夜、劇場を沸かせるその名も「ベルヴィル・トリプレット」! ギターはジャンゴだし、ジョセフィン・ベーカーのダンスにアステアのタップと30年代エンタメ全開! フライシャーアクションにおんぼろフィルムエフェクトも楽しく、なによりトリプレットの歌うテーマソングが素晴らしい!! 見ると3日間は耳に残ってしまう。 らんでぶぅぅぅ♪ 
もちろんサントラも買った! 後半で見せるばあちゃんカルテットの演奏も最高の音楽・自転車アニメーションだ! 劇場で観たいよお。
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