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ハロルドとモード/少年は虹を渡るのRのレビュー・感想・評価

3.8
ジャケットから予想していた感じと印象が違って驚いた。まずハロルドは少年ではありません笑 ふつうに19歳の青年。なんだけど中身は幼い子ども。冒頭、彼が住んでる大豪邸の中でいきなり彼が首を吊るので、えってなるのだが、彼は自分の母の前で何度も自殺のフリをするということを繰り返してる病んだ男子。お母さんを怒らせたいというよりも、むしろ気を惹きたいんだなというのが、すぐ分かる。ところがママは明らかに自分のことしか考えてなくて、息子のことは心理カウンセラーに任せっきり。けど自殺ゴッコがあまりにひどいので、ハロルドがおかしいのは女の子がいないからだ、とデーティングサービスに登録。この登録用紙記入シーンが面白くて、じゃあ代わりに書いてあげるわね、あなたはこう思ってるわよね、こうに決まってるわよね、ってな感じで全部自分の答えを書いていく。なんつーおかんや。で、彼には暇があれば葬式に行くという趣味があって、ある葬式でモードという79歳のお婆さんに出会うのです。ジャケみると優しいお婆さんとのハートウォーミングな交流をやわらかく描いていく作品なのかな、と思いきや、これも覆されます。このお婆さん、クレイジーではちゃめちゃなとんでもなく自由なババアなのです。人の車は平気で盗むわ、すごいスピードで事故起こしかけるわ、街路樹抜いて植え替えるわ、自由奔放。そんなモードの自由さに惚れ込んだハロルドの恋を描いていく。ただね、見てると、このモード婆さん、自由ってかどっちかってと行き当たりばったりの自分勝手で、一瞬一瞬を精一杯生きてるっていうよりは、とりあえず今さえ良ければええんじゃっていう刹那主義・快楽主義的ババアなのです。うーん。しかも、ハロルドがモードを好きなのはすごく伝わってくるけど、モードがハロルドのことを好きって感じがあんまり伝わってこないんすよねー。対象性に欠けてる感じがする。けど何でばあさんがそんな感じになってしまったかっていうのも終盤にさりげなく描かれる。ふたりとも異なる時代の歴史の闇を背負っているが故に、頭がおかしくなったとても悲惨な人たちなのです。なので、実際、ハロルドはモードの明るさ、元気さに魅了されてるように見えて、実は異常な行動に彼女を駆り立てる心の奥の闇の深さにこそ共鳴したんじゃないだろうか、という気がしてくる。モードはいろいろ深げで良さげなことを言うんやけど、それが全然いい方向に働いてるように見えないところがすごく興味深かった。だから周りに誰もいなくなったんだろうね。そして、最後は、あー、そうくるか、やっぱりいちばん病んでたのは……ってな展開になる。そんな感じで、表面上の陽気な雰囲気とはまったく違うレベルのダークさがそこここにこっそり描かれているのが、実におもしろいなと思った。ちなみに、別に闇を抱えてるわけでもないのに、モードみたく悪気ない感じで、陽気な身勝手さを押しつけてくる女がたまにいますが、ほんとやめてください。あと見てて気になったのが、ハロルド、色白すぎ! 体毛濃い! おわりに、ボク個人としては、どんな人間であっても、自由を謳歌してる生きることには大賛成だが、放縦に生きることには賛成しかねます。たぶん、本作はモードを愛せるかどうかでかなり見え方が変わるんじゃないかな。オレはぜんぜん愛せなかった笑