まりぃくりすてぃ

Mのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

M(1931年製作の映画)
4.8
高度に演劇寄りな統制がなされてると同時に、映像芸術としてのゾクゾクさせるワークを完遂。飾って引き締めての演出術がじつに行き届いた、贅沢映画。

美男美女が一人も出てこず、ブサめな人が多い。生真面目なぐらいに。このことが、まるでライ麦パンのようなざらつき(&ほのかな酸味?)として、人間群像の舌ざわりを可笑しみ込みで“立たせてる”。ドイツ語の角張り具合も内容にマッチ。
そんな中、やっぱり主役の男の異形性(奇怪で可愛らしい顔面/物悲しく滑稽な体型/不穏という以上に小心な態度)が、善くも悪しくも見世物小屋。。
にしても、Mがイニシャルでなくアレの意味だとは、ね。手スタンプのとこ、わくわくさせた。
それと、エルジーちゃんへの私の名残惜しさ。風船人形も楽しすぎてしっかり怖かった。
オモチャ屋さんの飾り窓の自動ガニマタ開脚ピエロなんかは、大昔のルーシー島田の資生堂ベネフィークのCM(母に教わってYouTubeで発見)にも似たのが出てきたんだけど、西洋特有の不思議世界への入り口的な怖さがやっぱりあった。オモチャって、時々怖いよね。
会議中のモウモウとした紫煙の量も、旧い時代の白黒映画にだけ許される(惚れ惚れと拝める)豪華さだった。

終盤、“裁判”シーンで舞台演劇っぽさが一気に膨張。これを軽い暴走とみるか、エキストラたちをムダなく使い切っての自在な寓話性チャレンジとみるかで、評価は上下する。私は、犯人の喋りすぎに不満は抱いたものの、リアリズムよりも敢闘精神を素直に尊敬したい。
ただし、最後のまとめの一言二言には納得足りず。

ところで、あの時代の主婦の家事(特に洗濯)は東西問わず大変だったんだなー。。。