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ロミオとジュリエットのKeithKHのレビュー・感想・評価

ロミオとジュリエット(1968年製作の映画)
4.0
言わずと知れた、イギリスの国民的文豪:ウィリアム・シェイクスピアによる恋愛悲劇が原作であり、これまで世界中で数多く映画化・TVドラマ化・舞台化され、更に時代・舞台を変えたオマージュ作品も多く作られてきた、広く人口に膾炙した戯曲の、フランコ・ゼッフィレッリ監督による、恐らく最も名高い映画化作品が本作です。

典型的なボーイ・ミーツ・ガールストーリーである本作は、実は二人の出逢いから熱愛、結婚、そして悲劇的結末まで僅か4日間の物語です。
元来が濃密な物語ゆえに、映画も澱みなくテンポ良く一気呵成にストーリー展開が進み、更に14世紀イタリアの街の外観・空気感を華麗に再現した映像技術が、本作の完成度を一層高めます。ただ、やはり観客を惹きつけた最大の成功要因は、新鮮で溌剌とした、しかし品のある主役二人の魅力です。
中でも当時16歳のオリヴィア・ハッセーの、可憐でいて妖艶、清純にして魅惑的、あどけない少女の中に垣間見える既に成熟した大人の女の情念は、今観ても色褪せず、思わず心ときめいてしまいます。
劇中で交わされ、名言ともいわれる、「Good night, good night. Parting is such sweet sorrow that I shall say good night till it be morrow.」。
何だか、こちらまで気恥ずかしくなります。

「男は恋して強くなり、女は恋して弱くなる」
「男は愛して弱くなり、女は愛して強くなる」
たった4日間の恋愛ドラマの中で、ロミオとジュリエットの心の動きと変貌が、二人の演技に如実に見て取れます。
中世を舞台にした歴史劇では、その歴史背景には普通は中々馴染めず、違和感を消すには時間を要しますが、美術・装飾・衣装の各スタッフの技術水準は高く、観客を自然にこの制約の多い不自由な時代の中に没入させ、のみならず二人への感情移入に巧妙に導いてくれます。

またニーノ・ロータによる主題曲「A Time For Us」の、リリカルでクラシカルな曲調とセンシティブでメランコリーな響きも、観衆をいつの間にか二人の稠密な恋愛空間に誘っていきます。
多分、映画史に永遠に残る名曲でしょう。
KeithKH

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