ユースケ

十三人の刺客のユースケのネタバレレビュー・内容・結末

十三人の刺客(2010年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

オープニングの内野聖陽による介錯なしの壮絶な切腹シーンと茂手木桜子による血の涙を流す陰惨なダルマ女シーンで掴みはOK。

集団抗争時代劇を確立した1963年公開の【十三人の刺客】を三池崇史監督がいつになく真面目にリメイクした本作は、300人を超える護衛に守られたゲスの極み将軍の弟の暗殺にたった13人の刺客が挑むという決死隊もの好きにはたまらない一本。
山田孝之、石垣佑磨、近藤公園、高岡蒼甫、浪岡喜一、窪田正孝、伊勢谷友介など、若手俳優の頑張りも素晴らしかったのですが、決死隊を務めた役所広司、松方弘樹、沢村一樹、六角精児、伊原剛志、古田新太、ゲスの極み将軍の弟に仕える市村正親、光石研、内野聖陽をはじめ、平幹二朗、松本幸四郎、岸部一徳など、加齢臭漂う渋みの効いたベテラン俳優には敵いませんな。

みどころは、谷村美月を犯し、斎藤工を首チョンパし、命を捨ててまで守ってくれた市村正親の首を蹴鞠のように蹴り飛ばす。アイドルグループのメンバーとは思えない極悪非道なゲスの極み将軍の弟を嬉々として演じたSMAPの稲垣吾郎の怪演。
「山猿の骨は硬いのう」や「迷わず愚かな道を選べ、その方が楽しい」など、名ゼリフを連発し、登場シーンを名シーンを変えるキャラの立ちっぷり。唐突な犬食いや「今まで生きてきて、今日という日が一番楽しかった」と礼を言う今際の際の何とも言えない表情もたまりません。

更に、オリジナル版のクライマックスの35分に及ぶ13人対53人の殺陣を質量共にグレードアップさせたクライマックス50分に及ぶ13人対300人の殺陣は必見。ド派手なギミックと見事な玉砕っぷりは必見。
松方弘樹の静と動の緩急のついた華麗な殺陣や伊原剛志の縦一文字に敵を切り裂く豪快な殺陣、そして、沢村一樹のここは俺に任せて、先に行け!展開にはシビれっぱなしです。

エンターテインメント時代劇としても優秀な上、天下万民を守る事を侍の道とする者と主君に仕える事を侍の道とする者、封建社会の歪みを体現する者と封建社会の外側で生きる者を描き、天下泰平の世の中で生きる侍の存在意義まで問いかける傑作。地上波での放送を切り捨て、クオリティを重視したテレビ朝日の英断も天晴れです。

唯一不満があるとすれば、伊勢谷友介と岸部一徳の絡み。これだけはいただけませんでした。