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オール・ザット・ジャズのとぽとぽのレビュー・感想・評価

オール・ザット・ジャズ(1979年製作の映画)
4.0
現実と虚構の境界が曖昧になりあらゆることを出汁/肥やしにする人生=キャリア、まるで『8 1/2』(女性に囲まれているし)

大人の映画
ボクが神なら…人生の遊び人にとって唯一の真実は死。スワンソング人生最後の晴れ舞台、それだけが彼にとって真、紛れもない真実。最後に見るのは、走馬灯よりどうせならショーがいい?死の淵で見せる生への執着…"死を5つの段階に分けた"。
自分勝手好き勝手、破天荒に生きた報い。作品の肥やし(種ネタ)に。人生で経験したものはダシに使われる。自分の死さえ?どこまでが現実で、どこからが夢や想像なのか…?プレイバック!平凡になるのが強い自堕落的なバカ。大好きで大嫌いなショービジネスの2面性。批評など恐れと闘いながら創作する。普通を恐れている、特別でないことを。そして、厄介なことにそれをやめられない。
『8 1/2』からミュージカル『NINE』が生まれたように否定しようのないエネルギーとテンション、カット割りや役者陣の力から目を背けられない。とにかくクセがあってスゴい!

"Better." 圧巻のイッツ・ショータイム!"演出も振付も最高"で、"よくできた台詞"。ボブ・フォッシーの凄さとそれに応えるようなロイ・シャイダーの熱演が、この創作者の問題とジレンマ、あるいはそうした頭では理解できない厄介な生き物についての本作を見事に引っ張っている。個性と力。
100万ドルの男の今際の際の対話。彼女は天使か死神か?女遊びばかり。セックス…セックス…セックス…他に頭にないのか!表現者、セクハラ?どれも満足できん。神が作ったバラは完璧。もはやペルソナじゃなく自分自身だ。元妻と現恋人、そして弟のいない娘。差異を伴う反復に自己破壊的な翳りと幸せ。
タバコ吸いながら検査受けるところにキャラクター出ている。いや、目薬の先端が目に付いているし…バイ菌繁殖するって。ダメだな、もう一度だ。Take five! それでも、最後の最後(最期)までショー・マスト・ゴー・オン!!


It's showtime, folks!
ツアー「あなたは下半身に正直すぎる」「うまいな…いつか使おう」ビクトリア "Lay back!!"「反れ」"Keeg playing, Paul."「万一」"In case."「生き方を変えて」「どうした、ミュージカル・コメディは嫌いか?」

P.S. 歯が黄色い



"I think HE's gonna die♪"
意義深すぎる狂気。このアートなショータイムは神掛かった編集と共に作り手の強迫観念を感じて素晴らしい♪"もう一度だ"、素晴らしい!圧巻のダンスシーンにもちろん音楽も最高。ロイ・シャイダー演じる主人公は女たらしで妥協なき鬼軍曹監督、自作品での表現のためにはツラくも当たるし自ら踊っても見せる完璧者義者。というこの上無く映画映えするキャラクターが感情移入できるかはさておき本作をより強固により魅力的に、そしてより狂おしくしていることは言うまでもない。完璧さを求めるあまり滑稽なほどの必死さ。剥き出しにセクシャルでいて大胆つまり前衛的かつ原点回帰。表現者とはいついかなる時も終わることなく苦悩するものである、まるで悩みが消えると自分も消えるか死にでもするように。変人の内世界に潜り込むような体験に観客すらも感覚が研ぎ澄まされていく。こだわり、ストレス、衝突。舞台劇のような臭い言い合いに男女の本音と飛び散る汗が垣間見える。ここでは誰もが夢を見て夢に破れるようなスポットライトの光と影。ショービズの裏側・舞台裏を覗き見るような危うさ、一瞬の輝きのためにどれほどの時間を費やしてきたことか。口論したりしている時以外かなり流れている音楽も合わさって少しサイケ感すら漂うようなストーリーテリング。キレキレでリズミカルな演出編集、舞台的照明が生み出すテンポに抗えない。ケバケバしく過度なほど色んな本気を感じる作品だからこそ映画と音楽の魔法どちらも宿っている。人生は未完成で時間が必要なのに時間は足りない。狂気の70年代と技術進歩に伴うチープなピコピコ感で近未来像を模索したエンタメな80年代を繋ぐのに最適なフィジカルさは妥協なき表現の極致。個人的にはミュージカルは大好きだし表現の過程を描いたものは身につまされる思いで興味深く見られるけど、本作はとても好きというほどでもなかった。何より見るのに尋常じゃない体力を消費する極限状態。だけど、届く人には届いてハマる人はハマるはず。だから今なお熱い支持を得ているわけで、それも大いに納得。最後の最後まで妥協しない生き様はまるで『赤い靴』的でもある。

「キューブリックも落ち込むのかな」「映画スターになりたいの、子供の頃からスクリーンの中の私に恋してきた」「あなたは下半身に正直すぎるの」「うまいな。いつか使おう」「よくできたセリフね」「これじゃだれも見ない」「普通になるのが怖いんだ」「並を恐れている」"I don't want to die. I want to live."「何かが壊れていく、何かがおかしい」DENIAL"♪Bye Bye Life. Bye bye Happiness. Hello Loneliness. I think I'm gonna die♪"

TOMATOMETER86%, AUDIENCE86
Critics Consensus: Director Bob Fosse and star Roy Scheider are at the top of their games in this dazzling, self-aware stage drama about a death obsessed director-choreographer.
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