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ONCE ダブリンの街角でのtsのレビュー・感想・評価

ONCE ダブリンの街角で(2007年製作の映画)
3.4
手持ちカメラのような撮影。舞台っぽさも映画っぽさもない役者の演技。アコースティック中心のストリート・ミュージック系の一連の音楽。すべてが自然体で、まるで自分がその場にいるかのような、ある意味リアルな臨場感を感じるドキュメンタリー風の音楽映画。

途中の曲の歌詞にもあったが、言葉では十分に伝えることのできない気持ちを音楽を通じて通わす様子に心がじんわりと潤うような気分になった。学生の頃感じた恋の甘さとほろ苦さを、大人の視点でもう一度再体験できるような映画だなぁと思った。「ほろ苦さ」って大事だよね。美味しすぎる料理では飽きてしまうし。そんな普遍的な人生のエッセンスを優しく教えてもらえた気がする。

自分も学生時代に作曲の真似事のようなことをしていたときは、好きな人と一緒にいることが嬉しくては曲を書き、別れや受け入れられなかった悲しみに苦しくては曲を書き、そしてそんな曲を相手や誰か心を通わすことのできる友人と聞き合って、言葉にはしないけれど気持ちを共有した経験があり、音楽が大好きで、音楽という表現方法(演奏するなり、歌うなり、作るなり、場合によっては聞くだけでも)を少なからず持っている人にとってはこの上なく、共感できる内容なのではないかと思う。

ただ、主役の二人とも、曲の内容しかり発言しかり、ものすごく後ろ向きな印象を受けたので、なんとなく舞台になっているアイルランドの、はっきりとしない、曇りや雨の多い(ぐずついた)気候と重なって見えた。

曲は文句なしにどれも素敵。特にギターとピアノの優しいハーモニーにはじーんときた。
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